其の百五十八 水辺の近況 「雪のペアリング」 | |||||||||||||||||||||||||||
W氏からメールが来たのは二週間ほど前のことだった。 そのメールにはゴギのペアリングの情報が書かれていた。 そう、確か一年前、やはりW氏の情報でゴギを見に出掛けたことがあった。 今年のゴギは去年のとは違い、しっかりとペアリングが見れたということだった。 その週の週末、僕はきっとそうなるなと自分で予想していた通りに朝早くから高速に乗っていた。 前日までの冬タイヤ規制は解除になっていた。 |
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さあ、このまま川を遡って・・な訳ないですが(^_^; | |||||||||||||||||||||||||||
メールの日の二日後に今年の初雪が降っていた。北部ではいくらか積雪もあった。 週末は冬型も和らいでいたが、道に雪が残っているかも知れなかった。去年のゴギの時より時期は早いが、冬の到来も早まっているようだった。 果たして降雪のあとでゴギはまだいるのだろうか。 まだ紅葉の盛りのころで、僕は高速を降りてからも景色を楽しみながら山あいを進んだ。 この日は良く晴れていて、徐々に暖かくなってきていた。 |
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山肌には雪が。今年はまっとうな冬になるかな。 | |||||||||||||||||||||||||||
W氏は今年も例によって木地師の墓を訪ね歩いているようだ。 今回のゴギの谷も木地師の墓に近いところにある支流のようだった。 目的の場所は深いV字谷のかなり奥で、小さな集落はあるがかなり険しい場所だった。 道の陰には雪が残り、山肌にも所々白いものが見える。 W氏の情報による林道の名前を地図で探すが見つからず、ここではないかと思われる林道があると停まって看板の林道名を確かめた。 それにしても寒い。深い谷あいは陽の光が届かず、逆に川の上流から降りてくる冷気が周辺にも広がってひんやりする感じだ。 何本目かの林道で、ようやくW氏が教えてくれた名前が書かれていた看板があった。 その林道は舗装はされていたが、かなりの急角度で標高を上げていく林道のようだった。支流はその横を流れているはずだが、少し離れているためよく見えなかった。 |
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問題の川。この先のいくつかの支流のひとつにゴギがいる。 | |||||||||||||||||||||||||||
ようやくのゴギ発見。 ペアではないし小さいですが。 |
落ち葉に紛れ身を潜めるゴギ。 | ||||||||||||||||||||||||||
しばらく車で上がると支流がすぐ横に見えてきた。 途中で車を停め、歩いて沢を丹念に見ながら歩いた。 ほどなくしてゴギを見つけることができた。 小さな溜まりにゆらゆらと定位している。小さいしペアではないがこの支流がW氏の言う川に間違いなさそうだ。 W氏のメールには尺ゴギのペアリングも見れたと記されていた。 期待を持って更に上流へ歩くと、所々でチビゴギがゆらゆらしている。かなり数はいるようだった。 |
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沢沿いを注意深く観察しながら歩く。 | |||||||||||||||||||||||||||
かなり歩いて上がったので、一旦車まで戻った。 車で更に上流を目指した。林道はどこまで続いているのか、ぐいぐいと標高を上げていく。 そして支流はどんどん細く頼りなくなってきていた。 だんだん水量も減り、ちょろちょろの流れになってきて、ついには林道から離れ始めてきた。 もうこれ以上はいくら進んでも尺ゴギなんて見れそうもなかった。どこかでUターンしようと道の広い所で停めた。見ると離れていた沢がそこにあった。 |
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雪に囲まれて、彼らはいた。 | |||||||||||||||||||||||||||
沢は道の下をくぐり更に山の斜面を上がっていっていた。 道の下には土管が埋め込まれていて、その出口は小さめの溜まりになっていた。 後日W氏からのメールでわかったが、そここそ尺ゴギの場所だった。そして確かにそこには大きな二匹の魚影が見えた。 果たしていにしえの山の住人たちは木を削る日々の糧として、ゴギを獲り自分達のタンバク源にしていたのだろうか。 まだ続いている林道からの景色を前に僕はそんなことを考えた。 |
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ゴギの谷は遥か眼下に。 | |||||||||||||||||||||||||||