気象庁の発表によると中国地方は梅雨明けしたそうな。
今年はよく降りました。アメダスの履歴を見ると夕べも降っていたようだしいまだに北部の河川群の水位は下がりきっておらず、それでもこと釣りとなれば下がりきる前が絶好のタイミングとあって、無理な早起きですら苦にならず(?)、今回は1000m級の県境越えから一気に標高を下げる深い谷底へと行って参りました。
絶えることのない命の源。
まさか谷へ降りる道中が崩れていたりとかしてないだろうな?って心配していたが、それはなかった代わりに道路のアスファルトが苔むしていた。すべらんだろーなー。
予想に違わず川は若干の増水を保っていた。まだ朝のうちだから少し肌寒い。まあこれは日が高くなればすぐにでも汗ばむ陽気となるだろう。
この川も一年ぶりで、夏になればここに来る。よその川では苦戦を強いられるこの季節にして、十分な釣果が期待できる。更にこの日は気持ち増水しているのだ。良くない訳がない。
切れ込むV字の下にその谷はある。 おおっ、ジリッと夏の陽射し。
とにかく釣り始めた。やはりちょっとでも増水していると遡行はきつい。しかし、僅かな水位の差が死んだポイントを生き返らせている。
濁りはないのでドライフライをキャスト。一投目ですかさず反応があった。ヤマメ域のヤマメだ。
いいリズムで釣り上がると間を空けずに魚の気配が感じられる。必ずしもフッキングはしないが、渇水の川で無反応のまま釣り上がる事を考えたら雲泥の差だ。

太陽は出たり隠れたりだったが、気温は思ったほど上がってこなかった。というよりも全くもって涼しい。湿度が低いのもこの日の快適さを増長しているようだ。よく考えたら五月頃の釣りよりも涼しいのではないか?
水量豊かな緑のプール。
日中の暑さをある程度覚悟しての釣りだったから、この快適さは拍子抜けだった。無論このまま秋を迎える事はあるまいが、気持ち良さに魚の反応の良さも加わって、何か「ホントにこれでいいの?」ってついおもってしまう。「何かあとでとんでもないしっぺ返しがあるんじゃないだろね?」なんて、普段恵まれていない釣り師はついつい貧乏性なことを考えるのさ。
「サービスカットだからね」ヤマメ談。
これはヤマメ域のアマゴ。 黒いハックルが効くのです。
あるプール。やはり増水の影響で流れ込みから淵尻まで全域すばらしいポイントになっていた。右岸の岩盤沿いのレーンに毛ばりを落とすとぽそっとしけたライズで反応があり、軽く合わすとずずんと意表を突く重い手応え! 「あれっ? でかいの??」 と大慌てでラインをたぐり寄せるとロッドは大きくしなりぎらりと水中で身をくねらす銀の魚体が光った。
「じゃあ、元気で」 「おまえもな」
なんと全く何の脈絡もなくgoodsizeのヤマメが釣れたのだ。ネットに入れて岸辺に横たえてカメラを取り出していると、ヤマメがバタバタ暴れてネットから跳び出してしまった。毛ばりは自然に外れていて、慌てて捕まえようとするが釣り竿を置いた釣り師ほど無力なものはない。

川は風の通り道でもある。またふと涼風が駆け抜けた。こんな気持ちのいい空間に身を置くとなんか出来ない事はないように思える。でもそうは言っても街に戻るとなにやらあれこれいろんなシガラミに手かせ足かせをはめられてしまう。
だからせめてものヒトトキの自由を勝ち取るために毛ばりを巻き、釣り竿を振り、車を走らせる。でももしかしたらここで撹拌(かくはん)された頭や身体は街での手かせ足かせを外す鍵になるかもね。
サーフェスフィルムの上と下。きっとそれぞれの住人の生活がある(?)