気がつくと八月の残暑はようやく夏のそれを感じさせる猛暑となり、「アトナンカイイケルカ?」と、月末までの休みの勘定を何度も繰り返していた。
そしてこの週末、朝から晴れている時の釣りは久しぶりで、つまり朝から暑い。ぎりぎり盆連休の雨の恩恵を水位に残しているだろうと踏んでの釣行は、どうやらこの日がラストチャンス(?)と思われる。
朝の斜光が川辺に届く。
めっきり朝に弱くなり、以前は夜明け前に川辺に着いていたりしたのだが、そんな時間は釣りをする時間ではない(!?)
6時に起きて8時に到着。十分である。むしろ明け方よりも明けきってから昼までの時間の方が魚の反応が良いような気がするが、それは釣り手がテンポよく釣りが出来ているということなのだろう。
明かるければ毛ばりもよく見えるし、川歩きも快適だ。
緑はあくまで緑で目に眩しい。
まずはアントパターンを結ぶ。着水すると「ポチョッ」っと一回沈む。そして数秒後にぽっかりとインジケーター部が浮かび上がってくる。どうも木の枝の張り出したその下の流れにいる魚たちにはこれがたまらないようで、立て続けに三匹釣れた。
そんなサイズじゃないくせに頑張って引いてくれる。よしよし。
あなた、黒いのに弱いのね。
水中から空を見る。 「よし、行け」
「言われンでも行くわいね」
雨の多い夏だった。おかげで渇水のキビシイ釣りは今年はあんまりなかったかな。
梅雨の間はきっちり一ヶ月釣りに行かなかったが、明けてからのペースは去年以上かも知れない。
ただ、梅雨明け以後も雨は続き、釣りも雨際の微妙な気象条件下での、しかしそれが功を奏してか賑やかに気分良く出来た。

今日はいい。ブラスター襲来を彷彿させるかの如くのブヨのうっとうしさをものともせず、たっぷりとした川の水量に水飛沫が眩しい。空も木々の枝葉も原色の彩りが容赦ない。
ただここに今居る事がそれだけで至福であると素直に思える(ん? それ、ホンネ?)
強烈なコントラストの日中。
ガツンときた。
次の瞬間、一気に持って行かれた。ロッドは「の」の字に曲がり(いや、いくらなんでもそこまでは)、なおもぐいぐい引きまくる。
でもそれはなんとなく手応えでわかるものだ。なんとか寄せながらネットを取ろうとすると取り損なって流れに落としてしまった。寄らない魚と格闘しながらショックコードを引っ張りネットを寄せる。しかし取れない。もう魚そっちのけでネット回収に必死だ。
今回も絶好調のロイヤルな毛ばり達。
やっとネットをキャッチ、魚は一段下のプールまで落ちている。もう間違いない。ティペットは魚体の中央にささっている。グサッと背中へのスレだ。
ようやく取り込んだ。お疲れさん。しかし、考えてみればこのサイズのヤマメのスレでこれなら、鮎の友釣りなんてどうなっちゃうんだろう? 二匹も掛かってそのうちのひとつはスレなのだ。それを本流でやるんだからやめられんだろうねぇ。
ヒカリのヤマメ。背中に傷が残ってしまった。
ジリッと日差しもほぼ真上からのものになった。今日はヤマメの反応もすこぶる良く、キャッチ・空振り・バラしと(これはいつも通り!?)間を空けずにヤマメのアタックが続く。
ようやく本調子、これから夏の釣りのエンジンが掛かるかって言うような感じだが、「アトナンカイイケルカ?」

偏光グラスを外すと目に飛び込んでくる彩り。とてもカメラのファインダーには収まりきりそうもない。
谷底だけではない、遥か上空まで夏一色だ。