このポイントで粘り始めてからかれこれ小一時間が経とうとしていた。何度も毛ばりに出てくるアマゴと何度も空振りする釣り人。にしても・・・である。
太陽はとっくに山の稜線にかくれ、偏光グラス越しの水辺は徐々に視界を奪うかのように光量が失われていく。もうやめようと思っても、ふんぎりがつかないのがつらいところ。次の一投でやめるぞって思ってるのにまたもう一回投げてしまうの♪なんでだろう♪(今週もか!?)。
よかった、リールの直径よりも大きくて。
今シーズン2度目の釣りはまたしても日曜日、またしても寝坊、またしても西のN川水系。で、またしても苦戦。どんより薄曇りで気分も重め。前日の天気のほうが水面下への影響は大きいだろうけど、当日の天気は釣り人の心のうちなる抑揚に作用する。できればもうちょっと風がなくてあったかけりゃぁなぁってさ。
でも時折射す日差しはやっぱり春のそれで、ちょっと元気が出たと思ったらびゅっと風が吹く。後ろ向きで飛ばされてるでっかいのはオオクママダラカゲロウか(あはは、見えてません)。
私もこれを使っています。
釣りを始めて一投目からニンフを付けていたが反応はなく、フラットだが太い流れのウェーディングはやはりきつい。あちこち移動して区間を変えてはみても魚の気配を感じる事は出来ないでいた。たまらずダブルニンフ(ニンフのゲープにティペットを結んで更にニンフを結ぶ)で深場をさぐると速攻でハヤが釣れた。確かにありましたよ、効果はね。
その後もダブルニンフを続けるがキャスティングに無理があり、くたびれてやめてしまった。
この季節にしてこのポイントは果たして?
そしてまた、夕闇が迫る午後4時半。最後にここと目ぼしを付けていた区間に入渓した。昼間には二人いた釣り師の姿もない。
プールの流れ込みの上流に立ちプールに向かって流し込む。毛ばりはドライフライだ。一投目、すぐ水面が弾ける。空振り。二投目、同じポイントでまた弾ける。また空振り。三投目、少し下流まで流したところで魚体が見える。今度はしっかりフッキングした。
上流へ移動して浅い流れの区間。水飛沫は上がらずにしかしフライが消えた。軽く合わすとしっかり手応えが返ってきた。
その更に上流、また浅い流れで今度はヘッド&テイルで魚が飛び出す。空振り。そのポイントはそこまで。次のポイントへ。そこでもう二匹をかけた。五時までの三十分で4匹。陽が傾くと俄然釣れ始める(というか、それまでの時間の釣りはなんだったのか?)。「夕まづめ」よりはやや早い「宵の口」である。
いずれも20cm以下。でもまあ、まずはよしとせねば・・・。
そしてもう一度ヘッド&テイルのポイントに戻った(そいつは25cmはあっただろうか)。しかしあろうことか満を持して結んだCDCダンに同じように飛び出した魚体を見てまたも空振りをしてしまった。もう時間を空ける余裕はなくなり、手を変え品を変え毛ばりを結んではキャストした。
だが、その後水面下のイマージャーや半沈みのパターンを試してみても姿を現さない。こうなると伝家の宝刀、スペントスピナーに登場願うしかなかった。これで出ない訳がないっ、と入魂の一投で間違いなくそいつは飛び出したが、何の手応えもなくラインが宙を舞ったのも間違いない現実だった。

嗚呼っ!!、と声をあげてもどうにもならない。対岸の民家のおじさんが野良仕事の手を休めて笑顔でこっちを見ていた。
露出の具合ではなく、宵迫る闇の訪れ。