きっと川はすっかり渇水のことだろうよ。釣り師の覇気さえ萎えさせる水位が容易に想像できる。
こんな時はひと雨降るまで大人しくしてたほうが懸命だ。勿論わかっている。わかっているけど「ひょっとしたら」って思ってしまう。あの谷ならひょっとしてそこそこ釣りになるんじゃないだろうかって。
雨が降るまで待ちきれない。予想最高気温35℃の街から32℃の山へ。
うーむ、あんまし変わんねーなー。
谷あいから湧き出る水蒸気が上空に雲を作る。
広島と島根の県境主稜、1000m級の峠はいつのころからかその偉大な道路開拓の功績を讚えて「御境」と呼ばれるようになった。
夏の恒例行事「御境越え」は、峠の向こう側の遥か下にある谷での釣りというよりも、あの峠を越えることでなにかゲンがつぎのようなことになると、いつのころからかそう思うようになっていた。
今年も残りの釣りを占うっていうんじゃないが、またあそこへ行って見よう。一気に標高を上げてから今度は谷底へ急降下。なにか起こりそうな予感がする。
絶好のポイントの前に立ちふさがるクモの巣。もはや4X、いや3Xで立ち向かう。
川辺に着いた時はすでに日は高く、相変わらず早く起きれなかった事を悔やむが、もうそんなこと言ってられない。
入渓地点で早速一匹掛かるも足元でバレた。なんだ、反応あるじゃないか、こりゃ今日は正解か? そのまま釣り上がる。しかし、徐々にこの日のこの川の全容が判明し出した。
その後は一切魚の気配はなくなり、頭上の日差しはその強さを加速してきた。水位もやはり平水とまではいかず、水温は煮えてはいないが魚の活性を望めるものではない。
そして頑強はクモの巣がポイントの上を覆い、フライやティペットの消耗も激しく、ポイントそのものも攻めきれず潰して行くだけだった。
(ちょっとヤバイ)
川に着いてものの30分で危機感を覚えた。今日がこんなだと今シーズンのこの先の残りの釣りも危うく感じる。なんとかしなくては・・。
陽光が木々に遮られる場所もあるが、結果は同じだった。
カチッとしたテレストリアルパターンには可能性を期待できそうもない。CDCのフラットウィングパターンに替えてみた。やはりCDCは偉大だった。およそこの気温この水位ではヤル気なんて出っこないとおもわれた渓魚をムリヤリ引っ張り出したのだ。
この日の釣りでCDCの効力を改めて思い知らされた。例のCDC対応のペーストフロータントも強力な武器になる。
ただ・・・、合わせ損なったんだけどね。がっくり。
ハックルはびっしりと厚く巻く。浮力にはなんの不安もない。
しかしCDCパターンに更なる期待をかけ、釣り上がる。
あるプールでライズ発見。べたなフラットプールのあちこちでライズしている。よく観てみると同じサカナがプール中を悠々自適にクルーズしながらライズしていた。
いるじゃないの、ヤル気満々のヤツがさ。満を持してCDCフライをキャスト。クルーズする魚体が見えている。
と、フライラインが着水するとイッパツでどっかに行っちゃった。
なんだよもう、つれないねぇ。
ヤル気のあるサカナ発見。プールを自在にクルーズし、ライズしていた。
結局朝の一匹のバラシが悔やまれる。にしてもそれっきりフライにかすりもしない。
CDCでサカナに捕食行動は起こさせられても、フッキングしないでは意味がない。
今日の釣り上がりコースの最終ポイントの滝つぼプールまで来てしまった。結局ここでもCDCパターンはおろかニンフまで持ち出して攻めてみたが反応なし。
(ま、こんな日もあるか)
脱渓し、車まで戻った。ふと途中にある支流を橋の上から覗いてみた。そして何も考えず3メートル位下の小さいプールにフライを落とした。
人間にとっては十分冷たい水。このまま首まで浸かりたい(?)

またまた温泉。汗でドロドロ、もう入らないで帰るなんて考えられない。露天風呂に浸かっていると土砂降りになった。風がひんやり気持ちいい。

橋の上から垂らしたフライになんとかなりのサイズのサカナが飛びついた。もうすっかりキモチは萎えていた。たるんだ体制のまま合わすとそれでもしっかりフッキング出来て・・でもどうやって取り込む?
抜き上げるしかない。ロクに考えもせず引っ張り上げようとしたが、途中でサカナは外れてしまった。絶句・・(最近はこればっかじゃ!)。
御境越えの締めくくりは露天風呂で。次につながる釣行であったと思いつつ。