空中でフライがあらぬ方向へ飛んで行くのが見えた。
オレンジのインジケーターは水面だけでなく空中での視認性もいいんだなあ〜・・・、とトンチンカンな感想を述べていたら急流に落ちて消えてしまった。むむむ、クモの巣め、すでに3つ目だ。
僕の釣りを阻むものはクモの巣だけではない。長い梅雨の増水が木をなぎ倒し、川を塞いでいる。
きっとその下には悠々自適の夏をくつろいでいるゴギがいるに違いない。
足元の水が弾けて、イオンも飛び散る。
ようやくの梅雨明け、水位は申し分なく期待過度の出先に待ち受けていたものはこの有り様だった。
なにしろフライを水面まで落とすのに、何回キャストするの?
フォルスキャストでクモの巣を取り払い、ようやくかと思えばフライがついていない。
なぎ倒された木の枝の間をなんとかすり抜けて投げてやろうと何回も投げる。いく度か枝に引っ掛かり、ティペットを切って結び直しまた投げる。コントロールが定まってきて、いざと言う時に限って後方の木に引っ掛かったりして・・・。
まずはヤマメ様。夏太りなさっておられました。
思うようにフライを流すことができず、まとわりついたクモの巣を取ったりティペットを結び替えたりばかりして時間が過ぎる。
この日は考えてみれば随分久しぶりの釣りなのだが、その感覚を味わう前に疲れてしまっていた。
唯一の救いは曇っていることだった。いくらか風も吹き、どちらかというと条件的には快適だ。
時折日が射すが渓の両脇にそびえ立つ広葉の巨木がそれをしっかり遮ってくれる。

久しぶりの釣りにはあれこれいろんな期待を込めている。
ドライフライが弾ける、ロッドが曲がり魚が走る、ネットですくった時のズシッとくる重量感。
も、妄想がえすかれ〜とする〜。
強烈な日差しを遮る広葉樹。
頼もしいわ(^_^)
渓の水をすくい上げる。
水は命なんだなあと、思うのです。
前夜に巻いたアントもすっかりくたびれました。お疲れ〜。
すでにシャツは汗びっしょりで、いくら直射日光の攻撃は受けていなくてもこればっかりは避けられない。しかし、街で冷房ガンガンの部屋にいるよりかはなんぼか健康的で、気持ちいい(気持ちいいと思えるのはこの状況と街に帰ってからの冷房ガンガン、ビールぐび〜っていう状況のギャップがあり、帰ればそれが待っているから(?)という話もある)。
毎年一回くらいは、夏とは思えない爽やかで涼しい釣行を経験できるのだが、今日がその日か?
ん?、いつのまにか快適リゾート地でのリラックスタイムが目的になりつつある。魚を釣ることを忘れてしまいそうだ。
ぬるりと水中で魚体が翻った。
ゴギだ(言うまでもないが)。バカでかいパラシュートを見切られた。ゴギをここまで神経質にさせているのは釣り人のプレッシャーなのか、この前までの長雨の影響なのか、温暖化の影響なのか(地表が熱せられて気温が上がるのだから、気温よりかは水温の方が影響度大(?)か)

本来のおっとり性格のゴギが悲しいかなピリピリヤマメに負けないくらいのスレ具合。それを見越したムネアカパラシュートを早速結んだ。
木漏れ日のマダラ模様が水面に落ちる。水中でさえその境目ははっきりして、なんとも賑やかだ。
またまた釣り人の滝登りぃ〜。 本当はのんびりした性格なんです。
#14のムネアカが当たりだった。
それからゴギの入れ食いが始まった。ロストしても大丈夫、こればっかり10本巻いてきた。
バラしたり切られたりネットから飛び出したり。とにかく忙しい
プールで走り回って手こずらせてくれたそのゴギは、僕が強引に岸に引っぱり上げると河原の上にころがってニョロニョロしながら僕と目が合った。
「こ、こんにちは」

雲がちぎれ、夏の日差しが走り抜けて行った。
あの、手ぇ離してますんで、帰ってもらって結構なんですが・・。