市内をインターチェンジに向かう時に目に付くのは桜だ。
ほぼ満開、見ごろだなぁ〜。
この日は日曜日ということもあるからあちこちで花見でもするのかねぇ。
街並みだけでなく高速に乗ってからも桜が目に付くが、あともうひとつ、景色全体がぼや〜っとしている。前日から西日本全体に黄砂が観測されている。
これもまた、春を印象づけるもののひとつだ。

今日の川は・・・、花はまだかな。
木によっては花は開き、薄桃色の彩りを添える。
この日の釣行先の里に着くと、里の花々は薄く色付いていた。
街ほどの開花具合ではないが、木によっては結構華やかで目を引く。
しかし、川筋を少し奥へ入って行くと、やはりまだようやく春になりかけていると言う感じの色合いしか見えない。まあ、地味ですな。

はっきりした陽射しはない。しかし、春先としては珍しく風も吹かずそう寒くもない。
こういうのを釣り日和って言うのかね?
僕が車を停めても、意に介するふうでもない
ウグイス嬢。 ホーホケキョ。
プールの彼方にライズ発見!
と、届かねぇ〜。
山里の春は地味な色合いで始まる。
釣り始めるとウグイスが鳴き出した。 春浅い里川でウグイスの声を聞きながらロッドを振る。
こりゃまたなかなかオツなもんですなぁ。しかもかなり近いところで鳴いている。僕が近づいても全く気にしていないようだ。
気にしないと言えば、川筋の農家のおじさんだ。トラクターに乗って川の横の畑の土起こしをしている。これまた、奇妙な釣り道具を振りながら川を歩く僕など気にしていないようだ。
ひとなつっこいウグイスと、無愛想なおじさんと、黄砂でくしゃみの出る私、へっくしん!
この日はニンフでもドライでもヤマメが出てくる。川に着いた時から虫も飛んでいて、暑くも寒くもないぼや〜っとした日だった。
川岸のアシの生えるあたりにはクロタニガワカゲロウの群飛が見れた。
このサイズのカゲロウがバンバン飛んでいるのなら、神経質な小さなフライを使わなくてもいいようだ。
飛ぶのはカゲロウだけでなく、トビケラもカワゲラも数では負けていない。
山の花々はまだ地味でも水辺の虫たちは賑やかに飛翔を繰り返している。
本日はクロタニガワカゲロウのスピナーが、飛びまくっとりました。
村はずれのお地蔵様。気をつけないと気がつかない。今日もたくさん釣れますように。 タッチダビングボディのピューパパターン。
水中での半透明感がリアル。
川筋の斜面にある民家に桜の木が見える。この木はまだ二分咲きといったところだ。
庭に女の子が出てひとりで遊んでいる。(こんな山奥に住んでて学校とかはどうしてるんだろう?)などと全くもって大きなお世話を想像してしまう。
ようやく外で遊べるくらいの暖かさになったが、周りの風景がちょっと寂しい。
もう少し花でも咲けばうかれて楽しいだろうにね。
おっと、僕は釣りに来たんだった。釣りするべ。
里川と言っても小さなそれのことだからすぐに上流域に達してしまう。
すると結構険しい岩場あり、要へずりのミニゴルジェ帯ありの様相を見せ始める。春先はそんなヘビーな釣行はちょっとまだ心の準備が出来てません。
小さいヤマメをかけたり外したり、を繰り返しつつそんな区間を釣り上がった。

ふと、静かなプールにさしかかった。虫が飛んでいない。上流に来すぎたかなぁ・・・。すると、小さなライズが見えた。
イテーッ、ハリ外せっ! ばかあ〜っ!!
キャストするとすぐに食いついた。
(楽勝っ!)と、フッキングすると思ったよりでかい。流れに乗って下って行く。
ゆるいたまりに誘導すると、水面で赤い魚体がうねった。
「?」 ナンダ?? このサカナは。
そのまま寄せてネットですくおうとすると、抵抗し反転する魚体には一瞬、まだうっすらと婚姻色が見える。

車まで歩いて戻るときになって、ようやくまわりの景色をしっかりと見れるようになる。
春浅い山里はモノトーンの風景が広がる。やっと水もぬるみ虫も飛びフリースも一枚脱げる季節になったけど、あともう少しかな。
さっきの女の子の家の桜もまだ咲きそろっていなくて、里の花々も季節の移ろいに遅れをとっている。
せめてひと足早く、サクラ色の魚で春の彩りを。
最後は予告もなく現れる巨大堰堤で打ち止め。