軽トラに続いて小型のSUV車が降りてきた。SUVは山葵田の作業や山仕事ではあるまい。
ひと釣り終えて場所変えか?
こちらは今到着したばかりなのに・・。
とりあえず先行者のことは気にせず、予定の場所から入渓した。
朝のうちは涼しいくらいだ。これくらいならもっと本流筋の広い川へ行けば良かっただろうか。
涼しさもさることながら、この快晴は梅雨のそれとは思えない。雨は降らないと困るが、僕としては平日雨、週末晴れ、を期待したい。
繁殖期のキセキレイ様。
お相手は見つかりましたでしょうか?
ゴギ狙いの上流域は予想通り渇水の手前。かなりキビシイ状況が目の前に広がっていた。
出ないポイントをぽんぽん攻めていく。状況は悪くてもゴギがいれば出てくるはずだ。それがこの様ならゴギがいないと解釈した。
先ほどのかもっと前か、微妙に新しい足跡が残されている。クモの巣は特に切られているものは見かけないが・・・。
このまま釣り上がると川沿いの林道は離れてしまう。
ここは見切りをつけてもっと下流の区間を攻めてみることにした。
かなりの上流域。水が足りない〜。
下流の区間はアマゴ域だ。
さしたる反応もないまま、またロッドを振りながらの川歩きが始まった。
この日は開けた川でも大丈夫と思っていたが、それは朝のうちだけのことだった。すでにかなり気温が上がってきている。風と木陰があるからまだしのげるが、直射日光をもろに浴びていたら、昼前にしてもうバテバテだろう。
木陰に立ち陽の当たる小プールに向かってキャストしていきなりゴギが飛び出した。
思ったよりもゴギは下流域まで降りてきていたようだった。
粘って引きずり出したゴギさん〜。
この辺りはアマゴのテリトリーのはずだったからゴギ圏の下流化は予想外だった。でもその後目当てのゴギが立て続けに釣れて、この日の満足度は若干ではあるが上がってきた。しかし、まだまだだ。
梅雨は雨が降るものと決まっている。だが今年の気象からすると、それが危ぶまれているのは間違いない。晴れの釣りは好ましいが雨が降ってこその川の流れであり、その流れが育むゴギやアマゴであるのだし。
いずれ梅雨の雨は降る。しかしこの週末、気圧配置は釣り人にほんのわずかの猶予を与えてくれたようだ。
夏のような高気圧でありながら、あのうだるような暑さはほどではない。
折角頂いたチャンスをチビゴギ数匹ではもったいない。僕はロッドを置き、川の水で顔を洗った。空にはゴギの斑点のような雲が湧いていた。
細長いプールが現れた。
両脇は切り立った岩盤で、上は渓畔林の傘に覆われている。その薄暗い水面に白いインジケーターのパラシュートを投げ入れた。
ぽっかり浮かんだ白い玉は、すぐにぽちょりと水面が弾けて見えなくなった。
ロッドをあおると一気に引き込まれた。ラインの先の予想外の引きの強さが現実味を帯びてこない。

それでもかなりの型だと認識し始めた時、掛かっている魚が妙な影で見えてきた。
なにかおかしな形をしている。いや、別の何かが付いているのか?
慎重に寄せてくると、なんと掛かっているアマゴをもう一匹アマゴが追いかけてきていた。つがいのもう一匹だろうか?
しかし、付いてきているアマゴの方が、掛かっているヤツよりも明らかにでかかった。
うろこ雲(巻積雲)は良い釣りのジンクス(ということにしとこ)。
僕は釣り人の本能に逆らわず、付いてきている方のアマゴをすくおうとした。
掛かったアマゴを岸近くまで引き寄せてもう一匹のアマゴにネットを差し出す。しかしすくえない。もう一度すくおうとするがネットをかわされる。
当たり前か、こいつは自由に動けるのだから。こんなことをしていたら、掛かっている方までバラしかねない。
掛けたアマゴをネットでキャッチした時、付いてきたアマゴはなんとも悲しそうにプールに消えていった。
僕は少し見劣りするサイズのアマゴにひとしきりシャッターを切った。
釣果は釣行の足どりを左右します。
もちろん連れ合いの待つプールへリリース。