世界遺産の街を過ぎ、山越えの農道を走っているとちらちらとS山が見えてきた。
しかし見えてきてからが遠く、道は真っ直ぐS山へ向かう訳ではなくて大回りしながら距離だけが進んでいく。
ようやくぐいぐいと標高を上げ出しても、道沿いには平地と同じように集落も田畑ある。学校もある。
ただ道路の勾配だけが違う。通学もさぞかし大変だろう、と余計な心配もしてしまう。
周回道路との合流点まできた。S山はきっとその風貌も昔のままにそこにあった。
霞むS山。今回はここをベースに。
連休で帰省のついでにキャンプすることにした。
全くの思いつきでテントとほかの荷物をちょっと積んだだけだからたいしたことは出来ない。
あれ、釣り道具は入ってるな。
周回道路でS山の北側へ回り込んだ。大きな自然館の建物に隣接して、広大な面積のキャンプ場がある。
一般のキャンプサイトからオートキャンプ、ケビン、水洗トイレにシャワーにコインランドリーと、設備もかなり充実している。
さすが国立公園内のキャンプ場だわ。
条件反射で思い出すのは小学校の遠足です。
管理棟でチェックインし、この近辺の釣り情報を聞いてみた。
S山から流れ出る川はどうかと思ったが、ヤマメは無理との回答だった。可能性は東のK川水系と南のG川水系に託された。
テントを張り終えまた車で出掛けた。
S山の南側にある温泉街で風呂と夕食をとるためだ。
S山は小学校の遠足で何度も来ているし、その後も何回となく訪れたことがあった。
しかし南の温泉は始めていく。地元にいた時は案外近過ぎて行かないものだなあ。
山あいにひっそり佇むS山温泉街。
山あいの小さな温泉街は、どちらかというとひなびた感じで、遠来の温泉客で賑わっているという様子は見れなかった。
周回道路沿いに大きくてきれいな温泉ホテルがいくつか出来ていて、どうしてもそちらへ客足が流れていってしまうのだろう。温泉街の方は、営業していない飲み屋とかが目立った。
定食屋に入り、カツ丼と割りごそばを注文。まあ王道だな。ほかにお客さんはいない。待っているとひとり入ってきた。バイクツーリングをしているふうの人だった。
そういや僕も以前はバイクにキャンプ道具を積んであちこちツーリングに行ったなあ。走って食べて温泉に入ってテント張って。実際元気が良かったなあ、とつくづく思います(^_^;
こちらの地方でそばと言えば割りごそばになる。
丸形の三段重ねの器に入ったそばにつゆをぶっかけて食べる。これまた何年ぶりかで食べた。埋もれた記憶を呼び覚ます一番の引きがねは、食べ物の味だなあ。
ライダー氏も割りごそばを注文した。そして店内をデジカメでぱしゃぱしゃ撮っている。ツーリングブログにでも載せるんだろうか。
店を出ると日は落ちていた。この温泉街にある公衆浴場を探す。ホテルでも入れるが、やっぱり公衆浴場をやっつけないといけないでしょう。
その土地に馴染む食をとるのも楽しみのひとつ。
浴槽と壁から突き出た蛇口のみ。
なんともワイルドな風呂でした。地元のおじさん達の憩いの場って感じで、ふらりと現れた僕がなんとも場違いな登場人物って感じではあったが、ぬるめのお湯は長湯の僕に合っていたから、しっかり長風呂を堪能した。
僕が上がるのと入れ替わりに先ほどのライダー氏が入ってきた。なるほど、行動パターンが同じだなあ。

五月はまだまだ山の夜は寒い。湯冷めしないようにすぐに車に乗り込んで、ひっそりとした温泉街を後にした。
薬師温泉「鶴の湯」。「釣るの湯」ではありません。
もうひとつ「亀の湯」というのもあります。
キャンプ場に着くと、僕のテントと少し離れた所に大きなテントがひと張り。ほかに人がいなかったらどうしようと思ったが助かった。
ランタンを付け、灯を楽しみながらビールを飲む。うむむ、もうほかにすることがないなあ。
管理棟の人の話だとK川水系もダム建設やら何やらで、今年は釣り人があまり来ないらしい。
それでもここからなら三十分くらいで行けるK川を明日の釣行先にしようと考えた。ほんのり桃色の魚体のきれいなヤマメが釣りたいなあ。
そろそろ寝るか。
久々のソロキャンプ。夜がヒマだあ〜σ(^_^;)
後編へつづく