ライズが始まればポイントが絞れるから、攻めようがある。
でなければどこをどう攻めようかっていう感じだ。
やっぱり本流は広い。それでもどこかでライズやなにかのサインが出てやしないかと、僕は川面を双眼鏡で見続けた。
それにしても快晴、というより暑い。今回も着過ぎだ。解禁から三週連続快晴の土曜日で、僕は着るものの調節を学習していなかった。
この天気ならハッチもライズも十分期待できると思った。
広い流れを前にすると、なんだか圧倒されます。
身支度を整えると自転車のおじさんがやってきた。おじさんの話によると前日に比べて水位が高いらしい。
そういや昨日は雨だった。
まあ土曜日に釣りに来るのに金曜日の天気は選べない。

河原へ降りると上流側に人影が見えた。釣りではないようだった。
しきりに水辺と河原を行ったり来たりしている。何かを採取しているような、そんなふうだった。
僕は流れに立ち込み、あることに気が付いた。
巡回おじさんと調査員氏。下流に僕。
オオイヌのナントカ。
踏まないように歩きます。
支流と水が混ざるとわかりにくいが
確かに本流の水が・・・。
調査員氏の立つ辺りに近づくにつれ、上流向かって左側の水が少し濁ってきた。
なぜ左の方だけかと思ったが答えはすぐわかった。調査員氏のもう少し上に支流が流れ込んでいた。そこから下流はどっかの国の川のように水の色が半分に分れている。
支流からは透明な流れが注ぎ込まれている。濁りのもとは支流ではなく本流だった。確かに上流でショベルカーが川底を掘り返していたが、ここよりは何Kmも離れていた。
本流の流れに支流のきれいな流れが徐々に混ざって濁りを薄めているから、最初は気が付かなかったのだ。
やれやれだが、まずはロッドを振ってみる。ライズがないからなんとも捕らえ所のない状態での釣りだ。
自転車おじさんオススメの瀬から続く筋にドライフライを流してみる。
フッと目の前を大型のカゲロウが飛び立った。一匹、また一匹。
なんだか水の濁りが引きがねになってハッチが始まったみたいに次々と飛び立っていく。
何度か流していくと二、三度魚が出てきた。ロッドをあおってもフッキングはしなかった。ハヤか?
カゲロウの飛翔は徐々に増えていくが、やはりライズはない。
気が付くと調査員氏はいなくなっていて、かわりに男の子が河原に立っていた。
開けた川では陽射しがきつくてそれだけでバテます。
本流は流程が長く流域面積も広い。よほど通っていつ頃のどこら辺りがいい、というのが分かってこないと難しいかなあ。
この日本流筋をうろうろしながら良さそうな場所に竿を出してみたのは、こういう広い川でライズを見つけて釣りたいなあっていう願望があったからだ。
ふと今週は本流へ行ってみようとそう思い立ってのことだから、いきなり釣れると思っているのはずいぶんと虫のいい話だが。
それでも増水と濁りがなければ、この場所は決して悪いポイントではなかった。チャンスがあればまた来てみてもいいな。
と、前方で川に石が投げ込まれた。さっきの男の子だった。むむむ・・・。
地元の子だと注意すると言ってもなかなかなあ。こっちがよそ者だし。
濁りと石投げ。僕の進む道は交わる支流を遡るしかないようだった。
支流であるから川幅は半分以下になり、ずいぶん景色も違う。合流点から少し上がるといい感じのプールがあった。
ここでも何度か魚が出てきたが、やっぱりハヤっぽい。
車からだいぶ離れてしまったから、一旦戻ることにした。
車で支流を上流へ。目当ての本流とはおさらばになった。途中、土手にmGの車が停まっているのが見えた。
今週も山K氏とmG登場。
僕と行動パターンが同じです(^_^;
またまた釣り場で彼らに会った。
まだヤマメは手にしていないらしい。僕が以前やったことのある、この支流の上流へ一緒に行ってみることにした。
昼を過ぎているから目ぼしい場所にはすでに車が停まっている。
ずいぶん上流まできてようやく入渓場所を見つけた。本流でそうだったようにこの辺りもかなりの増水気味だ。川歩きがけっこうきびしい。
ポイントとしては悪くない所がいくつもあるが、反応はない。
午前中に人が入っているのかも知れない。
増水の具合は上流へいくほど顕著に。
交互にロッドを振るが一向に魚の出る気配がないまま、道に上がれる所に来た。ここを過ぎるとまたしばらく道路に上がれなくなる。
山K氏とmGは道に上がり、僕は少し先の小プールを投げてみた。
道の上から山K氏が見る中で、プールの流れ込みにパラシュートを落とすと水面が小さく割れた。
合わすとズンっという手応え。
「おー、いい型じゃ」と山K氏が叫ぶ。水中でぐるぐるうねりながら寄せられていく魚体が上からはっきり見えている。
ようやくの一匹。今年は一匹が遠い。
ネットですくうとスレだった。
19cmくらいのヤマメ。どおりで引きが強いと思った。
道に上がると、mGがもっと広い所で釣りたいと言った。やっぱりみんな考えることは同じだなあ。
支流の本流と交わるちょっと上の方、僕が石投げと濁りに追われて入った辺りの少し上をやってみることにした。

シーズンが進むとだんだん上流の険しい流れを求めて車を走らせるが、解禁まもない今の時期はやっぱり広いゆったりとした流れに気持ちが向いてしまう。
それはそのゆったりした流れや周りの風景が、ようやく春めいて水や空気がぬるんできだすこととマッチしていると感じるからかもしれない。
再び広い河原に立って、確かにこっちのほうが似合うな、と思った。
あとは僕だけ釣ってちゃ悪いんで、山K氏とmGにがんばって釣ってもらうだけだ。
やはりライズを待ちきれず、ロッドを振るふたり。