「明日どこいこうか、思案中です」
「たぶんかなり増水しとるじゃろ」
「今年はまだ小さいのしか釣ってないから、20cmを目指します」
「せめて25cmにしようやあ」
M川氏の言葉に今週末の目標値が決まった。
25cm、ハードルがあがったな。

川筋は風もなく平年以上の陽射しに水面がきらめく。
スッと波と違う光が水面に見えた気がした。魚だったのか? フライを投じると白い魚体が波間に光った。
解禁四週目も晴れ。雪は跡形もありません。
合わせると確かにヤマメのようであったが、すぐにバレてしまった。
釣りができないほどではないが、このフラットな里川でさえやはり増水していた。
ドライフライではちょっと苦しい条件ではある。まとまった雨が降ってから三日経っていた。ちょうどいい水位までには二日早い。
川幅の広いプールならなんとかなりそうな気がした。だが浮かせても沈めてもなんの魚信もなかった。
バラしたのは浅くゆるやかな瀬だった。そういうポイントにわずかに残っている状況なのかもしれない。
川幅が狭まると増水の加減がよくわかります。
時折風が強く吹くがすぐにおさまる。極小のユスリカだけがふわふわ飛んでいた。大場所の強い流れを前にして、だんだんフライを投げる気がしなくなってきた。
プールでニンフを沈めて、丸々太ったカワムツを何匹か釣った。
気が付くと前方に釣り師が現れていた。僕のいる先にある堰堤の上に入ろうとしているのがわかった。
十一時半を知らせるサイレンが鳴り僕は一旦車に戻ることにした。
こうなったらあそこしかなかった。まずはボウズの危機から脱出しなければならない。
増水は餌釣り師にとってはどうなのか?
アシの密集地帯をかき分けてフラットな流れに出た。
そう深くない細長いプールが続いている。目を凝らすと水中できらりきらりと魚体が翻って光を反射していた。時折水面でもきらりが現れる。水辺の石にはマエグロヒメフタオカゲロウのニンフの脱皮殼がたくさんついている。ぱたぱたと飛んでいるカゲロウもマエグロのダンかアダルトだろうか。
パラシュートを投げると水面で光ったあたりで出た。しかしまたバラし。
水中のきらりきらりもまだ続いている。今度はそこへめがけてニンフを投げた。反応なし。ただ思った通り魚はたまっていた。ここは解禁日で何とかヤマメを手にしたポイントだった。
再びパラシュートに変えて、水面を注視する。
少し上流側、視界の端にきらりと光ったのが映った。波の反射かライズか、はっきりわからなかった。
パラシュートを投げると白い魚体がスルッと覆い被さった。今度はしっかり針がかりした。寄せてきた魚は、これまた解禁日に釣ったのと同じヤツではないかと思うようなヤマメだった。
多めの黒点、サイズも同じような感じだ。
プールの奥へ投げるとまた出た。またまた同サイズ。更に一匹出たがこれはバラした。

しかし、やっぱりちょっと面白くない。
解禁日は人も多けりゃ雪もある。僕も感覚が戻っていない。そんな中でも何とかがんばってヤマメを手にした。それは満足度が高かった。
それが四週目になってもまだ、解禁日の時の条件の悪い中での釣果を当てにするというのは、釣りに対する進歩というか前向きな姿勢が感じられないなあ・・・我ながら。
これで万が一解禁日と同じヤマメだったりしたら、なおさらだ。
水面での食事は今年初だったかもしれないヤマメ様。
水辺のセグロセキレイ様。
食の好みはヤマメ様と一緒です。
TMC108SP-BLのパラシュート。
#12で大当たり。
また移動した。
途中、釣り仲間のT君の車が見えた。先週まで二週連続山K氏とmGに遭遇していたが、今週はさすがに会わなかった。
T君を見つけ、道の上から声を掛けると、彼が別の水系で山K氏とmGに会ったという。
ここから主陵連峰を越えた標高の高い川でだ。まだ雪代の収まらないエリアだが、果たして向こうはどうなのだろうか?
T君もかなりてこずっているようだった。僕は更に上流へ向かった。
急流でもがくT君。釣れましたか?(^_^;
支流が交わる小さなプールでドライフライに魚影が走った。合わせたがフッキングしなかった。
僕はすぐニンフに付け替えた。
一投目でマーカーが引き込まれ、ロッドが大きく曲がる。ニンフフィッシングがばっちり決まった。
と、プッという感触を残してロッドが軽くなった。ああ、掛かりが浅かったのか。
そのすぐ上で、また水面のきらりが目に止まった。しているかいないかわからないようなライズだ。
散発的にカゲロウの飛翔は見られる。やっぱりドライか。
なるべく河原か緩くて浅い所を歩きます。
バテますんで(x_x)ゞ
最初のパラシュートを結び、光ったポイントへ。すぐに出た。
解禁ポイントと同じようなサイズ。
その上でもう一匹。そのまた上でも。どれも計ったように同サイズだ。
じっと水面を見ると微かなライズも見れなくなった。
カゲロウはその数を増やしている。ひょっとしたらこの日がこの辺りのヤマメの初ライズだったのかもしれない。
次の一投。水面にフライが落ちるや黄褐色がぬるりと現れた。
M川氏との約束には少し足りなかった。
錆びた魚体。斑点も多く、野生的です。