寒の戻り。まさにそんな感じだ。
市内の桜もほころびかけたところでストップ。逆に縮こまってしまっている。
寒さがやわらいだと思って油断してたから、カウンターで効くなあ。
しまったフリースを取り出してバッグに詰め込む。フライボックスにはドライフライにニンフを少々。
天気の方は解禁から五週連続で晴れの土曜日になりそうだ。
願わくばハッチ、そしてライズを。
そしてちょっと平均サイズを上げてもらえれば・・・いいなあ。
羽化直後のマエグロヒメフタオカゲロウ。
まさにホヤホヤです(^_^)
川に着いてまずその水位にたじろいだ。広い川にずっしり重たく流れている。次に水の冷たさ。なんか解禁の時よりも冷たいんじゃないの?
週の中ごろに雨が降っていた。山地では雪になっていたはずだ。
それが川に流れ込んでいる。ほころびかけたヤマメもまた縮こまってしまったかもしれない。
果たして花見もライズもお預けになるのかあ?
希望は天気の良さだけだ。
ん? 川は東へ延び、逆光でフライが見えん。
少しづつ春の気配が目立ち始めています。
徒渉がきつい。
平坦でも重い流れは体を持っていかれそうだ。瀬には流せそうなポイントがない。
いくつかある流れのゆるいプールにニンフを放り込んでみる。
・・・沈黙。
なんだかとんでもない川へ来てしまった気がしてきた。
小さな虫がいくつか飛んでいるだけでこれまた寂しい。もちろんライズのラの字も見当たらない。
なんだかこの辺りには魚が一匹もいないのではないかと思えてきた。
絶妙の石の配置。水生昆虫の絶好の住み家です。
このまま釣り上がるよりも思い切って場所変えしたほうがいいようだ。
目の前のなかなかいい感じのゆっくりとした瀬も、フライは空しく通り過ぎるに違いない。釣れないだけの遡行はあっという間に時間が過ぎてしまう。
場所変えは効率良く魚を釣るためには思い切りよくやっていくべきだ。
しかし僕はそれが下手だ。どうしてもあと少し、あのプールまで、とか言う感じでだらだらと続けて時間を消化してしまう。踏ん切りがつけられないのだ。
横を見ると川沿いの県道へ上がるにはおっくうなブッシュが立ちはだかっている。せめて上がりやすい所があるまではこのまま行こうか。
だが県道を釣り師らしき車が行ったり来たりしている。誰もがより良いポイントを求めて移動しているのか。
水面のフライをスレスレでかっさらうようにしてそのヤマメは現れた。
そいつは合わせた途端に下流へ向かって突っ走り始めた。
ロッドがぐいぐい曲がる。どちらかというとヤマメが走っていると言うよりも重い水流で流されているっていう感じだ。
岸よりに寄せてネットですくった。小振りだが体高のあるヤマメだ。
この一匹で一気にモチベーションが高まった。
きっとこの先にはまだまだ良い型が潜んでいるに違いない。
まってました! この川独特の幅広ヤマメ。
パタパタっと大きめのカゲロウが翔んだ。小型のカゲロウの蚊柱も見える。
結局いくら水が冷たくても水位が高くても、カゲロウの動き出す時間がキーになっているようだ。
さっきのヤマメはその先鋒に違いない。
流れをまたいでゆるいポイントにフライを投げた。流しきる直前にまた水面かすめ取りライズ。
フッキングしたがそのまま落ち込みに落ちてしまった。これまた流れに押されてぐいぐい引く。
僕は追いかけて流れを下った。
開けた川では焦らずゆっくりロッドを振りたいです。
落ち込みの下の深みからヤマメを引きずり上げた。この手こずり具合がいいなあ。
型の割に引きが強いのは流れの助けを借りてだが、これで魚がサイズアップになれば引きも相当だな。

岩に囲まれた小さい落ち込みで茶色の魚体がフライを追った。
慌ててロッドをあおったら少し当たった感触があった。
それでも何度かフライを投げると、活きの良いゴギが飛びかかり、またしてもロッドをぐいぐい曲げてくれた。時間を追うごとに活性が高まってきた。
三月のゴギ。早いけど引きは盛期のものでした。
またさっきと同じカゲロウがパタパタと翔んだ。今度は単発ではなく、何匹も翔んでいる。だんだん風が出てきたから大きめの体はもろに風を受けてどんどん流されている。
その一匹が岩に止まった。ナミヒラタカゲロウだ。
水中で脱皮し一気に水面に浮上して羽ばたくこのカゲロウはヤマメの活性に影響しない訳がない。
ナミヒラタを意識したパターンは巻いていない。僕はサイズを合わせて#12のパラシュートにナミヒラタの念を注入した。これでナミヒラタのフライができ上がった。
ものの数十分だけ、彼らが川を席巻する。
目の前を何匹ものナミヒラタが乱舞する中、前方のプールを凝視する。ライズはない。
一投目、すぐに来た。この日の決まりのかすめ取るような出方だ。魚はまたしても流れに乗って下る。ロッドを立てて何とか止め、ネットですくった。見事に太ったヤマメだ。
二投目、また来たが今度はかなり小さい。下られることなくすぐに寄せてリリース。
三投目、かすめ取りだ。フッキングするとその時点で重い。しかしすぐにするすると寄ってきた。が、そのまま流れに乗って下流へ走り出した。僕も走る。藻の生えた石がつるつる滑る。
急流に入られた。引きの強さはヤマメが大きいからなのか流れがきついからなのかわからない。落ち込みを二段過ぎてようやくヤマメが止まった。
ほんの三十分でナミヒラタの姿は川から見えなくなっていた。