水面に何かが現れて、それはハリ掛かりはしないのだが、それでも確かにあった反応にようやく安心出来た。
果たして今のはヤマメだったかどうかだが、魚が生息している流れであることには間違いない。解禁からほぼ毎回使っているシャンクの曲がったパラシュート。水気を切ってペーストのフロータントを薄く塗る。そしてパウダーのフロータントをまぶしながら、あらためてその流れを見てみた。ここも水が多いなあ。

場所によっては対岸へはおいそれとは渡れない。しっかりとした川は頼もしくもあるが釣りづらくもある。
僕は岸際の流れのゆるい所を専門にフライを投げ込んでいった。流心はとてもじゃないがフライを流してどうにかなる雰囲気ではなかった。
また水面に変化があった。合わせなかったが、魚が出ているのかどうか判断に苦しむ出方だ。
どうも釣りの方針が定まらない。気分的にドライでバンバン行くぞって言う感じにならないなあ。
ダムと言っても貯水率は極めて低いようです。
そもそもこの日はこんなところに入渓する予定ではなかった。
狙いの流れに入る辺りには車が停まっていた。第二候補の場所にも。
あとはもっと上流か下流か。上流には小さめのダムというか巨大堰堤とでも言うべきものがある。
そこまで行ってみたら、そのバックウオーターへと降りる旧道が目に付いた。これで今日の釣り場が決まった。
バックウオーターはそのままダムサイトの際まで流れが続き、ダムというか堰堤の貯水の湖は存在しない。
それでも満水を想定してか、新道は川筋からかなり高い所を走っていた。
ようやくお目見えのヤマメ様。育ち盛りは食べ盛り?
しばらくして水面の変化の主がフライに掛かった。今年いい加減飽きるくらいに見た同じサイズのヤマメだ。
飽きるなんて言っちゃあ悪いんで、丁重にリリースする。
水は多めだし川幅も広いし、ドライは難しいのかも知れない。
もう少し季節が進んでいればこの水位だってドライで瀬を攻められるのになあ。
期待するほど虫は飛ばず、もちろんライズも見当たらない。どこかでこの状況を打破するなにかが起こらないかなあ(なにかってなに?(^_^;)
徐々に川と道路の高低差が開いていく。心細いなあ。
ふと足下を見るとなにかがあった。
マエグロのダンだ。一匹、二匹。
流れの上の空間にはついさっきまで見れなかった虫たちの飛翔がふわふわと見える。逆光でシルエットが浮かび上がって、虫たちもより多くより大きく見える。
ほんの一瞬でこれだけ目に見える虫の数が変わるとは。もちろんこれはヤマメにとっても同じことのはずだ。
僕は勇んで虫の飛び交うその流れにフライを投げた。
また水面で地味な変化。ここのヤマメはサイズもフライへの出方もずいぶんと遠慮がちだなあ。
レギュラーのマエグロのダン。
羽化後はしばらく石の上で休憩しています。
ターバン眼が目印のコカゲロウの仲間。
かなりの極小です。
次の瞬間、岩陰からクモが飛びかかり、あっという間に捕らえられて(>_<)
中くらいのプールでライズを待った。道路は見上げるかなり上方にある。
河原はまるで重機で整地したように土砂や石が積み上げられている。これは増水してダムに水がたまった時の流れのうねりが作り出したもののようだ。

辺りにはかなりの数の、いくつもの種類のダンが飛んだり止まったりしている。それでもライズはない。
待ちきれないのでまたフライを投じた。水中から姿を現した小ヤマメは直前でフライを見切った。
むむむ、パラシュートではダメか。
状況が一変したのはフライを結び変えてからだった。
お、カゲロウじゃ。食べさして。
その前に手ぇ放せ( ̄^ ̄)
この谷も桜は今が見ごろ。
ひと風吹けばひと吹雪あります。
これだけダンが飛んでいるんだからと結んだのは、エルクのウィングのダンだ。珍しく真っ直ぐなシャンクのフックに巻いたパターン。
コンパラダンと違って、ウィングの前後にハックルを巻いている。まあ平たく言えばエルクウィングのソラックスだな。
で、これがパラシュートを見切る生意気な小ヤマメを一発で食いつかせた。
およそ今までのシブイ反応がなんだったのかというくらい、次々と呆気なく食いついてくる。
やっぱりもうちょっとはまじめにマッチザハッチを意識しよう。
どうもこの川のヤマメは食べ物にウルサイようです。
マエグロよりもちょっと大きめのクロタニガワカゲロウのダンも現れた。
マエグロに似ているが、なにしろこちらは水中羽化。こいつが川原の石に止まっていたらチャンスだ。
クロタニガワの羽化を食いそびれたヤマメは、僕の投じるダンに迷わず食いつくに違いない。
早速キャスト・・・沈黙。
キャスト・・・沈黙。
キャスト、出た、空振り。むむむ。
更に釣り登ると、正面にコブシの花の咲く山が見えてきた。そういえば新道へ上がる目処はまだたっていない。
クロタニガワカゲロウは足の濃淡の斑紋が特徴。
このあたりまで来るとダム湖が満水になっても湖の水はこないだろう。
歩を進める度に足下からダンが飛び立つ。魚影はともかく水生昆虫は豊富だ。水のきれいさを証明しているなあ。
水面付近を飛ぶダンにはライズしないがまた僕のダンにヤマメが出た。
ダンで釣れるヤマメはなんだかとても素直できれいで、心地よい引きが僕を満たしてくれる。
次のポイントへキャストするとその先に、川へ降りてから見えなくなっていた旧道がまた姿を現し、上方の新道へ続いているのが見えた。
コブシの花の咲く山を見ながら、よっこらしょと。