其の七十五  水辺の近況 「仲良きことは美しきかな」
スコーン(パンではない)と、まさに抜けるような青空が、「いつまでも寝てないで出掛けたら?」と言っている。
じゃあ、そうします。
ETC だから、それこそスコーンと高速に乗って、ものの一時間でいつもの渓に到着。スゲー晴れてる。

今日はヤマメの姿が見られるだろうか? 禁漁になってからひと月半。なんかもうすっかり釣りから離れて、ヤマメもそうカンタンには見れるもんじゃない・・・見れた(!?)
仲良く お泳ぎ遊ばすヤマメ様ご夫妻。
ペアリングなどと野暮な呼び名は使いません。
禁漁期間にヤマメの姿を見る事は、すなわちロッドを使わずに魚と対面するということだから、無防備に水面付近に浮いてきていないと見れない。
そんな時期にヤマメを見れると、なにかとても特別なモノを見たような気がする。

まさか釣りたいとは思わないし、もちろんロッドも持ってきてやしない。
せめて写真でも撮ろうかと、ファインダーを覗くと、おや? もう一匹。なんか、仲むつまじく寄り添っておいでで。
木立の向こうに平和な流れが見えてきた。
スタンダードパターン? いえ、綿毛です。 光射す、これは絶好ポイント。でも魚影なし。
毎年この時期になると釣りシーズンの行きつけの川へ出掛ける。
ヤマメの姿は見れたり見れなかったりだが、川の様子を見るだけでもいい。
釣りに躍起になっている時とはちょっと違う視線で見れたりするものだ。
(あそこのプールは浅くなってる)とか、(あのチャラ瀬はドライフライ向きだな)とか、来年の釣りをイメージするのも悪くない。
こんな時にライズでもあったり、魚影が見えたりしたら、それだけで来た甲斐があったっていうもんでしょう。
こちらはお一人で。恋人募集中?
今回はヤマメの仲むつまじい様子があちこちで見られた。こういう時って警戒心が薄れるのか、あまりこちらの気配に敏感に反応するような事はなく、大っぴらにプールのゆるい流れに身を任せている。
ヤマメたちは渓流が禁漁期間に入った事を知ってか知らずか(知る訳ないか)、のんびりくつろいでいるようにも見える。
もうじき稚魚放流のイベントがあるので、いくつかの河川ではわらわらと川が騒がしくなったりもするけれど、その頃には今居るヤマメたちも自分の然るべき居所を見つけていることだろう。

そして、秋は深まり、やがて雪が降る。
禁漁になってからひと月半。
別に釣り依存症っていう訳ではないけれど、あれほど週末の多くの時間を費やしてきた釣りを全くしない訳だから、やっぱり出掛けてしまう。
海や管理釣り場とかもあるけど、どうも食指が動かない。そっちよりも山へ出掛けてヤマメが見れる方がいいやって思えてしまう。たまには気晴らしで管釣りでもいいんだけどね。

雲一つない快晴の初秋。
ファインダー越しにヤマメを見続けていたら、頭がくらくらしてきた。
日差しだけは、まだ秋とは言えない強いもので、じゃあ帰ってビール飲むか。
出たっ!(ますだおかだのおかだ風に)