其の七十九  放流だけでない放流のこと
11月の第二週と言えば、紅葉真っ盛りである。見事に染まった山々にわき見しいしい集合場所に着いたのは、午前八時、気温0度(!)
そこら中に霜が降り、よくもまあ布団から出られたなと、自分をほめつつ、おはようございます。

去年は紅葉は過ぎた時期だったが、今年の放流イベントはばっちりピークだった。ロケーション的にも天気も言うことなし。
稜線から朝日が顔を出し、通い慣れた川筋がまぶしく輝いた。
紅葉よりも漁協のタンクに興味津々の方々。
放流イベントに集まる面々は、皆さんお忙しく過ごしていらっしゃる。
毎年このイベントでしか顔を合わせない人も何人かいる。そしたら放流のみがその人との関わりになるのだから、これってなんかすごい。

一年に一度、一年分の話をするのだから、話は尽きない。やれあそこの川でどうだったとか、ここのプールはこうだったとか。フライマンは禁漁になっても、そのシーズンの振り返りトークで忙しい。
来年再会の予約済みのヤマメ様。いってらっしゃいませ。
川に放つヤマメに何を託しますか? 写真も撮ります。いろんな形で記録する。もちろん記憶の中にも。
川に放つヤマメを介して、よっ お久しぶりっす って感じ。飲み屋で飲んだりとか釣具屋で会うとか道端でばったりとか、そういうのとは一線を画す、なんとも特別な関わり方だ。
そしてそのひとときは一年に一度のくせして、妙に印象深い。 
これに参加しないと、なんかその年の釣りがしめくくれないようなそんな感じでもあるのだ。それが、快晴のもと紅葉に包まれて過ぎていくのだから、なおさらだ。
ひととおり放流が済むと、今度はいつものキャンプ場でランチが始まる。これでまた、大話大会が始まるという運びだ。
飛ぶ水しぶき、輝く玉網。 泳ぎ出す稚魚を見守る面々。
(来年はあいつをイチバンに釣るで・・。)
バケツを持って川を歩き、話して食べて飲んで。来年の解禁の川を想像しながら、舞う落ち葉を目で追う。
全く不思議と言うか律義なもので、私(だけではないかもしれないが)は禁漁になったらあまり釣りをしたいとは思わない。
それでも久しぶりの渓流を感じてヤマメも見て、釣りの虫がうずき出さない訳ではない。竿を振れないもどかしさもある。

でもむしろこの季節に渓を訪れる事そのものが、釣りを意識しなくても十分目的になっている。
例によって最後はいつものアウトドア宴会で。
中にはこんなヤマメ様も混じってました。
来年、ヨロシクね。