その7  沈まないニンフと浮かないドライ(1)
たっぷりウエイトを巻き込んだヘアーズイヤーニンフをキャスト。水面下からの魚のあたりがマーカーに出るゾ出るゾと目を凝らすと、マーカーの脇に不信な物体が・・・。そんなはずはないと目をそらす。そりゃいくら目をそらしたっていましがたキャストしたニンフに決まってるでしょ!。
とまーこんな経験はみなさん一度や二度はおありでしょう(?)。
なんでこんなに重いのに沈まないんだろう? ヘアーズイヤーのけばけばが気泡を抱えるからかなぁ。でも水に馴染ませて一度は沈むようになっても、フォルスキャストをしすぎた時なんかまた乾いて浮いてしまう事がある。
フェザントテイルなどの細身のニンフはもちろんこんな状況にはなりにくい。前回ご紹介した銅箔テープをボディに用いたパターンなどはその最たるもので、逆に張力で水面に張り付かそうとしても出来るものではない。
やはりけばけばごわごわのファーをダビングした空気を抱えやすいボディのニンフが強い浮力を持つ(?)。
フォルスキャストですぐ乾くのも、ファーが荒く巻かれて風通りが良いためだろう。
もちろんシンク剤を塗っちゃえば全ての問題は即解決なんだし、フライフィッシングのシステムには ニンフフライ→シンクドレッシング という既存の図式が成り立っている訳だし、なにも抵抗を感じる必要はないはず。
でも沈める目的でタイイングしたフライが沈まない、というのがどうも引っ掛かる。沈むための素因がけばけばパターンの場合は巻き込んだウェイトだけで、タイイングのドレッシングによる「沈ます」という機能が組み込まれないのはタイヤーとしてどうなのよ?(って誰に言ってんだ?)。
フラッシュの反射でかなりファーが多く見えるけど、実際はもう少し控えめです。
水流で揺らめくファーの効果が渓魚を誘うのは理解できる。そのためのけばけばなのだから水中のフライとしての機能では成り立っている。しかし肝心の「沈ます」機能はウェイトに任せっきりでボディ自体は水中ゆらゆらのために水面下のパターンとしての仕事を放棄してやしませんか?
なんて、まあこじつけで無理やり問題提起してますが、なんか自然でない沈め方って水中でも不自然に見えはしないだろうか?って思ったりするのです。ひょっとしてドレッシングの工夫(というか自分のニンフタイイングのくせとか)次第でシンク剤なしでもすんなり沈むけばけばパターンが巻けるのでは? とも思ったりするのです。
しかし、思いつく工夫と言えばどうしてもけばけばを少なくするということになる。それは水中でのゆらゆら効果を減してしまう訳で、けばけばの最も抜きんでたパターンのMSCなどその意味がなくなってしまいかねない。

しかし、こうも思ったりするのです。果たして水生昆虫の幼虫でけばけばゆらゆらの状態ってあるんだろうか? 足やえらが多いからそれを表現している向きもあるし、スイミングしている動きを表現する効果もあるだろうが、けばけばパターンはあきらかに実物に比べると度が過ぎている。実際には少々過ぎた方が魚を誘う事に関しては秀でているのも否定できないが、それはニンフのマッチザハッチパターンというよりもアトラクターの要素が強くなる。
それならけばけばパターンに対してこういう解釈はどうだろう? 幼虫のディテールを模倣するのが沈みやすいスリムなボディのニンフであり、水中の動きや状態の演出を追及するとけばけばパターンに行き着く。その代償として浮力が付いてしまったと。
ディテールにではなく、似ても似つかぬ状態模倣に終始する釣り師に嘆くニンフたち(!?)