其の百八  混ぜて巻く毛鉤
白菜と豚肉は合うわあ〜。
白菜に豚の脂がしみて絶妙〜。
って、今日もダッチオーブンに白菜と豚を重ねていく(^_^)

数あるフライマテリアルの中には、いくつかのものをいっしょにして使うものがある。
そしていっしょに使うことでの効果は、まさに白菜と豚肉のごとくベストマッチするようになっている。
果たして最初にこれを考えた人は偉大だわあ。
この二種のハックルの醸し出す絶妙の色合いはいかに?
アダムスをはじめいくつかのスタンダードパターンには、ひとつの鉤に二種類のハックルを巻くパターンがある。グリズリーとブラウンでアダムスやマーチブラウン。グリズリーとジンジャーでグレイフォックス。白黒のグリズリーに茶系のハックルが混ざると、何とも言えない色合いというか模様が浮かび上がる。
これが魚を誘うんだなあ〜っと、納得してしまう。
水生昆虫自体はこんな複雑で微妙な感じではなく、どちらかというと単色っぽい(黄色(→モンカゲ)とか赤(→アカマダラ)とか)イメージが強い。ならばこのブレンドハックルは本物のカゲロウにはない、それでいてきっちり魚を誘う機能が備わっているということか。
フェザントテイルも僕がよく使うパターンだ。そしてこれにもマテリアルのブレンドとも言える手法が用いられている。
パターンの呼び名にもなっているキジの羽根。それをボディに巻くのはわかるが、リブのカッパーワイヤーが、自然素材と金属という全く違う素材なのに違和感を感じさせずにしっくりときているのに驚く。
しかもただしっくりくるだけではない。フェザントテイルに巻いたカッパーワイヤーが、なにか生命感さえも宿しているようにも見える。ニンフの節の間からのぞく粘膜の光沢のような、そんなイメージか。
鳥の羽根に金属。この取り合わせがフシギに合う。
しかし、こんな人の目にも微妙で繊細な色や質感の機微が、果たして水流に揉まれるさ中で魚の目にどこまで映るのだろうか? なんてよく思う。
渓魚に一瞬の信号を送る、そのもとになるものがそういった細かな積み重ねで成り立っているのだから、見えているのか?なんて疑問は余計な心配なのかも知れないが。
淡泊なフォームとかのボディよりも自然素材のダビング材を使おうとするのは、無意識にそんな信号効果をイメージしているからかなあ。
ダビングボディと言えば、僕が気に入っているものにレッドフォックスがある。
これまたお気に入りのパターンのマーチブラウンのボディはヘアーズファーとレッドフォックスを混ぜて使う。
するとまさにシンセティックのダビング材のマーチブラウンという名の色そのものになるのだ。
染色していないナチュラルマテリアルでもブレンド次第でこうなるのだ。
ま、マーチブラウンの色そのものがカゲロウの体色からきているのだし、最初に考えた人がその色を出すためにナチュラル素材をあれこれ混ぜて試した末のヘアーズファーとレッドフォックスなのだろう。
フォックスとヘアーズファーの繊維の固さや太さの違いが作り出す効果・・・かな?
結局マテリアルを混ぜて使うことはタイイングの出発点にあることなのかもしれない。
ナチュラル同士あるいは人工素材を合わせて、もとの単品をそれ以上の魅力ある素材に変えることができる。毛鉤を巻くのにはなんの制約もないのだから、初めてなにかとなにかを混ぜた人は決して特別な方法だなんて思わずに、当たり前のようにそうしたに違いない。

そして今夜も僕は獣の毛皮のかたまりから毛を切り出し混ぜ、糸によりつけ鉤に巻き付ける。
なんとも怪しい行為で怪しく魚を魅了する(?)毛鉤が出来上がる。