其の六十七  CDC ゆらゆら
昼間にタイイングをすると、なにやら舞っちょるのがよー目立ちます。
ダビング材だとシンセティックならまだしも、ヘアーズイヤーなんかのファーならもうすごいことになる。
CDCのファイバーなんかも、それこそライトフェザーの名に恥じない浮遊っぷりでふわふわ、ゆらゆら。
でもコイツが実は魚を誘う底なしの可能性を秘めている。釣り人の重たい期待も背負い込んでいる。フライメーカーの業績すら担っている。
そんなにもいろいろ乗っかった上でこんなに軽いんだからタイシタもんだ。
光の具合によっては水中からはウィングのCDCは全く見えない。
細く密なファイバーがタイイングを容易にし水生昆虫のか弱いウィングを絶妙に表現する。軽さが水面での姿勢を確実なものにし、その絶対的な浮力はもはや言うまでもない。水面干渉の得も言われぬ妙は魚に抗いを許さない。
魚のヌルが付いたら流石にローテーションを余儀なくされるが、そこに行き着くまではほぼ完璧な仕事をこなすマテリアルだ。

(チョット高いかなぁ)って思う事もある。どこにどういう風に付けるかで、消耗の具合も変わってくるが、CDCパターンを続けて巻き出したら、ハックルよりもたくさん使うだろう。すると標準の袋入りのやつくらいなら、すぐなくなってしまう。
今年好調のCDCスティルボーン。
それでもいいマテリアルを使ってフライを巻き、いい浮き方をしていい魚が釣れればきっと値段は気にならない。とは言え、あんまりな浪費もどうかと思うので、出来ればCDCフェザーは余すところなく使い切る。
フェザーを2枚か3枚重ねて先端をそろえてダンなどのウィングに・・というのがよくあるパターンだが、根元側は結構ファイバーが残ったまま余ってしまう。当然この余った部分のファイバーを千切って束ねてウィングとしてまた使う。この場合は先端はばらばらだが、ハサミで切ってそろえたりしない。巻き留めたファイバーを片手で保持し、もう片手で先端を千切ってそろえるのだ。
ファイバーの余った所を使う場合にハサミで切りそろえてしまったら、CDCの効果が半減する様な気がする。
ほかのマテリアルよりもCDCの場合が、切りそろえた事による人工的な手が加わった感が強く出るような、違和感があるというか。

千切ったらそれが自然になるのかと言うと、本当の先端ほどではないがそれでも人の目で見る的にはしっかり自然だ。
千切った時の反作用か、ファイバーが適度にフレアして広がるのもイイ感じだ。そして千切る時には意外なほどにその強度を確認することになる。
ファイバーに生える繊毛。きっとフライマンのために生えてきたんだ(?)
CDCはつかみどころのない、ぼわっとした感じで、そこに在る。
硬いハリガネで作られた釣り針の上に縛り付けられ、その硬さを間接的に包み隠してしまう。エルクヘアやハックルファイバーではこうはいかない。

繊細にして強い浮力と強度を有するこの小羽根。唯一この羽根を駆使して魚を釣ることの出来るっていう、そこに至った巡り合わせを幸運に思いましょう。
えっ、それで釣れるとはわからないって? その前に釣りに行かねばね。ずいぶん行ってねーなー・・・。
千切りウィングのCDCラスティ。
今シーズンのふところ刀です。