其の八十七  フライリールの顔
フライリールを印象づけるフェイスの穴。もともとラインの乾燥を促進するのと軽量化が目的で開けられたのが最初だろうけど、今ではそれがデザインの重要なファクターになっていることは疑う余地はない。

フライフィッシングそのもののイメージもこのリールの穴が強く焼き付いている。
今更その機能的な所を私なんぞが語るまでもないのだが、この釣りの「顔」とでも言える穴の並びの美学には、少しは話せるスキマくらいはあるかなぁ。
などと、まだ外へ持ち出すまでにはちょっと時間があるのに、引っ張り出してみた。
シャンパンゴールドのフェイスに規則正しく穴ぼこが
規則正しくあけられ並べられた穴は、その周ごとに大きさが違えられている。
中央に寄るほどちいさくなり、円形の放射状を強調するデザインとなっている。
よもや、この穴を見て、(ラインの水分が発散されてるー)とか、(穴が開いてる分軽るー)とか、感じる訳はないのだけれど、気分的にはそんな感じなのだ。

もともと回転してイトを巻き取る仕組みの道具なのだから、カタチの至る所に円形があるのは自然だ。
これほどまでに円の組み込まれたモノってほかにはないだろう。
オーソドックスなフライリールは、そのデザインに飽きることはまずない。
さて、部屋でカリカリしてみる。
円の集合体が回る。地球が自転しながら公転する。移ろう季節もなにもかもが回り巡り来る。
考えてみれば自分の周辺は、回るモノばかりだ。あるときは重力を感じ、あるときは時間の経過を思い知る。
それでいて、普遍的なこの道具のカタチ。変わらないから逆に新しい。
部屋でも川でもいつもそんな新鮮な気持ちでリールを回す。私のフライフィッシングはリールを回すことなのかも知れない(ってそりゃ言い過ぎ!?)
素材、色、デザイン、様々です。
機能優先でこんな姿になったフライリールだが、その機能美が今では誇らしい。
部屋に飾ることまではしていないが、ロッドを片手にライズを探しながら川筋を歩いていたり、釣ったヤマメの横に添えてファインダーを覗いたり。
その度に目に入るこの道具が、自分のものなのになにか羨望の対象のような見え方をするのだ。

特別道具を溺愛している訳でもないのだが、こういう気持ちがやまないうちは、まだまだ解禁を待ち遠しく思う日が続く。
新しい中にも懐古的なテイストを残すHardyの次世代リール。