其の九十二  オオクマとロードアイランドレッド
そろそろ渓流でも大型のカゲロウが飛び始める季節になってきた。
フライボックスにも#12のパラシュートやスタンダードパターンは入っている。
そうは言ってもなにか目新しいパターンでも巻いてみよーかいね? と、マテリアルの引き出しをごそごそ。
下の方に沈んでいたジップロックのひとつに目が止まる。
なにか濃い茶色のハックルケープだ。
それがロードアイランドレッドだということに気がつくのに時間はかからなかったが、最後に使ったのがいつだったのか? 思い出せない。
光沢、表面の凹凸、そして色の濃淡。
どれをとってもカゲロウのボディそのもの。
そうそう、こいつはストークを使うマテリアルだった。名前以外はほとんど忘れてしまっていたなぁ。
昔はハックルティップを使ったスペントスピナーが好きだったので、それを巻くのによくこれをボディ材に使っていた。
それがいつの間にかダビング材・・・(う〜む、ここんとこボディにはダビング材以外のマテリアルは使ってないなー)ばっかりになってしまっていた。
フライタイイングを始めたばかりの目に映る全てが新鮮だった頃の印象が、少し蘇ってきた。
やはりこのマテリアルはストークが主役。
最近お気に入りのSザキウィングと組み合わせて一本巻いてみた。
今がハッチのピーク時期を迎えているオオクママダラカゲロウ。そのダンもスピナーもボディはまさにロードアイランドレッドがリアルに再現してくれる。
中空のストークは浮力も耐久性も問題なかろうし、そんなにはタイイングも手間ではない。なにより見た目(魚ではなく人の目)が素晴らしい。なんで何年間もほったらかしで、使おうとしなかったんだろう?
このテのマテリアルは、ダビング材のように淡々と何本も巻くという感じではなく、一本一本を丹念に巻き込む・・というようなスタイルになるからかなぁ。
マテリアルの重さ(重量ではなく、生産の背景とか入手の容易さなど)は明らかに違い、それがタイイングの時の「ノリ」に直結しているからかもしれない。
巻き上がったフライをしげしげと眺めつつ、オオクマのハッチをイメージしてみる。
いくら大きなカゲロウが飛んでいても、魚がいなくては話にならない。
しかしヤル気のある魚なら、こいつを見逃すはずはない。
それなら、それを意識して巻いたこのフライはいかがでしょう?

ロードアイランドレッドのボディに魅了されて、たまらずライズするヤマメを想像しながら・・・、もう一本、巻こうかな。
タイイングする僕ですら、このマテリアルに魅了されているのだから。
こんなフライで釣れたら、釣りがもっと楽しくなるに違いない。