其の九十五  蟻毛鉤のこと
ボディのリアルさは見た通りです。
アリの行列が渓流を渡るところはみたことはないが、その絶対数を想像するに陸生昆虫の季節においては渓魚の捕食対象の筆頭ではなかろうか?
アリ自体の水辺への干渉はその必然性を強くは感じないが、それはほかの昆虫と変わらないだろうからやっぱり筆頭だろう。
僕の夏のフライボックスにはやはりアントパターンは多い。紛失率が高くなる季節のことだから、量産型のダビングボディがほとんどだが、いくらか時間をかけて樹脂塗料を何層にも塗り重ねてみたりピーコックを使ってみたりと、飽きない程度のバリエーションは巻いている。
そこが赤い理由。洒落っ気でしょうか?
ムネアカオオアリの存在はフライフィッシングを始めてから知った。
なんで真ん中のトコだけ赤いンだろう?? その色をまとう理由はともかく、その色をフライに取り入れることで、完成度がグッと上がるのは間違いない(自己満足??)
赤いスレッドを巻いたり蛍光レッドのフロスを巻いたりして、ムネアカのフライをこつこつと巻く。赤がなくても釣りに大きな影響はないのかもしれないが、やはり巻き手の美学(そんなもんあるの?)から言えば、自然界のカラーコーディネイトに負ける訳にはいかない。
グリーンのセンターバンドのライツロイヤル。
グリーンのアピール力を備えたアトラクター。
夏休みの自然観察でアリの巣を・・・。 ありそうでなさそうなテーマだが、アリに夏のイメージは、ある。それはフライフィッシングを通してのものなのかどうか? いずれにしてもアリ抜きにフライフィッシングの夏は語れないと思う。
春の水生昆虫たちは、ニンフからのハッチの過程やステージの状態が一冊の本になるくらいに取りざたされるのに、陸生昆虫の場合はただ陸から水辺に落ちるだけだからか、フライ業界での扱いも薄っぺらだ。
それはちょっとかわいそう。夏は彼らが主役のはずだし、小さなアリも大きな一匹を引っ張り出す力を持っている。

釣りにキビシイ季節ではあるが、大物の出る率の高まる季節でもある。アリのフライで一発大物を。などと考えながら今夜もアントパターンを巻く。
今宵も熱帯夜かしら?