前の日に釣り具屋に寄った時、あんまり暖かいんで気温をチェックした。
23度! そうかあ、そんな気温になる日が来たんだ。
店の近くの桜並木はすでに散っていた。花がついている時を見るヒマがなかったなあ。
でも気が付けば(今まで気が付かなかったのか?)もう4月中旬。まさに虫のハッチの真っ盛り。
フライフィッシングの一番楽しい季節ではないか。
いい加減 Syowma にもこれがサカナの引きだっていうのを教えてやらなきゃあいけないんでないの?
シリナガマダラカゲロウ登場。この虫なくしてフライなし、とは大袈裟?
先週まだ花が開いていなかった川沿いの桜は一週間で満開になっていた。快晴、無風。今度という今度こそまあまあのサカナを(^_^;釣ってやるぞと息巻いて、とっておきの川へ向かった。
ようやく川面にも陽射しが届き出す頃、ふわ〜っと小さな虫も飛び出した。
ふと解禁からこれまでの釣りを思い出した。いや、思い出そうとしたが思い出せなかった。
ひと月半経つのにその間どういう釣りをしてきたんだ?
えらく印象の薄いひと月半だった気がする。でもこれからはそうはいかんゾ。
こちらは桜が見ごろ。ちょっとは見ろよ〜。
レギュラーのマエグロヒメフタオカゲロウのニンフが水中の石にたくさんとまっていた。石をはぐると大型のカワゲラのニンフやマダラカゲロウのニンフが見え隠れする。
水中でそわそわ落ち着きのないニンフを見つけた。なんとか水中写真を撮ろうとカメラを沈め、レンズをニンフに近づけた。
すると急にニンフがレンズに迫るように浮上してきた。モニターを見ていた僕は驚いてカメラをどけた。ニンフはそのまま水面まで上がってきて、すぐに背中が割れ始めた。
「これが水面羽化か。」僕は初めてその場面を見た。ダンが現れるその瞬間を撮ろうとしたが、ピントが合う間もなくカゲロウは飛び立っていった。残念。しかしこの分だとまだ水面羽化は見られるかもしれない。
しばらくニンフやカゲロウの写真を撮っていたが、ハタと我に返った。
いかんいかん、僕はいったい何をしに来ているんだ。さ、さかな釣りをしなきゃ。
風も幾分収まっている。早速キャスト。すぐに極小ヤマメが飛びついてきた。
その後はまたフライを追う魚影は見えなくなり、虫の多さに未練はあったが僕はこの川に見切りをつけた。

時刻は午後3時を回っていた。ここから近いひとつの支流に狙いを絞り、僕は車を発進させた。
クロタニガワカゲロウのスピナー艦隊出現。
例によって例のサイズ。
徐々に陰に沈む川。フライが見えるのもあと少し。
決断が遅かった。真北に伸びるその川は西側の山の稜線に日が沈むまであとちょっとだった。
しかし川の様子を見ると、いやいやよくぞこのタイミングでここに来た、と思えた。
最初の川を上回る虫の多さだった。しかもいろんな種類の虫が飛んでいる。カゲロウはもちろん卵塊をつけたカワゲラやカディスやガガンボ。
石の上にはクロタニガワのスピナーが群れてとまっている。油断していると口から入ってきそうだ。
ただ虫は多いがライズはない。
どうか? さかなが居ないのか?
フライを流していくと、ドスンと重い手応えでロッドが曲がった。
と、すぐにフッと軽くなった。
またドスン、またフッ。
これはどういうことか。さかなが水面の捕食に慣れていないのか。

先ほどの川で見たシリナガは水面での羽化に時間のかかるタイプで、それだけ渓魚に狙われやすい。
シリナガを見つけたらこれはチャンスだと喜ぶわけだが、この川ではまだ見れていない。
そしてドライフライでバラし連発のこの状況。
とにかく僕はフライを交換した。
シリナガマダラカゲロウのハッチはライズを呼び起こす!?
水面がダメなら直下だ。イマージャーを投げるが今度はドスンもない。
フローティングニンフもダメ。エルクヘアカディスまで投げたがもちろんスルー。
気が付くと川の縦半分が陰になってきた。みるみる陰が伸びていく。ぞわぞわと寒くなってきた。
手の打ちようがないまま、ゆるい小プールのところまできた。
と、陰の中に白いものが見えた。ライズの水しぶきだ。
これはシリナガの長めのハッチにライズしたものかどうかはわからなかった。しかし次結ぶフライはすぐに決まった。
その一匹を釣った時、太陽は稜線に隠れた。
今週もマエグロのニンフ。先週より黒っぽい。
シリナガのニンフ。羽化直前。
最初に入った川は水量・渓相とも申し分なかったが、どうにもサカナの気配は薄かった。
散々釣り人が入ったんだろうなあ。良さそうな場所は誰でも入ろうとする。
ぱたぱたっと目立つ虫が飛んだ。午前のハッチの時間か。
しかしハッチがあってもこの川ではライズは期待できそうもなかった。
道路に上がれそうな場所で切り上げて車に戻った。
少し場所を移動した。すでに正午になっていて、僕はおにぎりを食べながらまた川原の観察を始めた。
卵塊をつけたカワゲラがそこにもここにも。
卵はなぜこんなにも目立つ色なんだろう?