其の六十三  沈め、ニンフ
週末に釣り具屋へ顔を出したら今年の遊漁券が入荷していた。
ものの数週間で解禁なんだなぁ・・とあらためて思い、数字の並びの良さそうな券をムリヤリ買わせてもらう。
禁漁からの五ヶ月半の間、フライを巻いた。十本・・は巻いたな。月二本とは我ながらハイペースだ(ハイペースか?)。
去年の解禁後最初の釣りはドライフライだった。三月はニンフで行く事をイメージしているのだが、ドライに手が伸びがちだ。
今年はニンフで行ってみるか。
ニンフ・・ねぇ・。
びっしりとウェイトを巻き込む。直撃を食らわせれば脳しんとうを起こすか?
以前にも書いた事があるのだが、沈まないンだよね、あれ。
沈まないニンフと浮かないドライフライのジレンマは、実はそれがフライでの釣りのキーにもなっている。それはわかっちょる。それでも半年ぶりの釣りなんだから、もうちっとはスマートなエントリーを望みたいものだ。
ちゃんと釣りが成り立っていて、それで釣れないのなら諦めもつこうが、成り立っていない(浮くものが浮かず、沈むものが沈まない)状態で遅々と過ぎる時間に苛つくのはまっぴらゴメンだ。
釣りでのストレスは回避できるのなら回避するにこした事はない。
気合いを入れて沈み具合と水中の効果のバランスのとれたニンフを巻いてみる。
このバランスってのも使い手によって微妙に変化するからややこしい。ま、私は私のバランスで巻けば良いのだが。

巻きながら川で使う時の事を考えた。てこずらずにすんなり沈むニンフをキャストしたとしよう。それでも不安なのはフライが見えないからだ。
先述した「成り立っていない」状況は、沈むというポイントはクリアしても、魚が反応しているかどうかは見えない。インジケーターがぴくりともしないと(ドライ投げときゃよかった)って考えてしまう。ドライフライはそこが目で見える分安心するんだろうなぁ。
ずいぶん昔に巻いたニンフたち。
凝ったのもあるねぇ。
そうは言ってもニンフを使って水面下でフッキングさせて釣った魚は、なんかそれはそれで特別な気がする。ニンフを巻いているとファーが舞い上がったりとか、指カサカサでダビングがやりにくかったりとかするし、ヘアーズマスクのスキンに怪しげな卵の抜け殻なんか見つけた日にゃぁもう最悪。ぞぞーっ(実は今回の更新の時に見つけてしまった!!)
それでもまた、ニンフを巻こうっていう気になるのは、やはりニンフを使った釣りも面白いと感じているからで、だからこそバリバリに浮いてないでちゃんと沈めよな、って突っ込んでしまうのだ。(ホントに川で声を出して言ってます。アホじゃ)
このオフシーズン、十一本目のタイイングはずしりと手に重量感を残すフライになった。
ただ、ウェイトをたっぷり巻き込むばっかりじゃ能がない。ソラックスのボリュームと相対的にスリムなアブドメンに仕上げ、シルエットにメリハリをつける。
ウエイトもしくはビーズヘッドはすみやかな沈下を促すサポート役にすぎない。

結局水面下のニンフの仕事に期待してます。私の仕事はタイイングまで、あ、キャスティングまで、あ、フッキングまで(全部か)。でも魚を誘うのはそちらの仕事です。
T社のタングステンビーズヘッド。
比重の違いが決め手になるか?