其ノ三百九 アウェイの島へ
おこぼれ求めて、カモメ舞う!
瀬戸内の島の名前を冠したラーメンを知ったのは、何年か前にその島の漁村に写真を撮りに行った時だった。
インスタントで商品化されていて、いい感じのイラストのパッケージも気に入っていた。
そしてインスタントとは言え結構うまかった。
その元となっているラーメンが島のお好み焼き屋で出されていると知ったのはついこないだのことだ。それは行ってみなければなるまい。決断は早かった。
その島には11時過ぎに着いた。少し早いが食べてもいい時間だ。車を港に停め、集落へ歩いた。
店の位置は食べログでチェック済み。Mapアプリで確認しつつ海岸から集落の路地の中へと向かった。
店はMapに出ていた。しかし、僕はなかなかそこへ近づく事ができなかった。自分の位置はMap上では店に近づいたと思ったらするすると通り過ぎてしまう。
一番近づいている時に辺りを見回してもそれらしい店は見当たらない。
地元の人に聞くのが早い。海岸まで出れば人もいるしいいのだがそれもくやしいのでまたうろつく。
どうも位置情報の誤差があるようだ。自分の位置か店の位置か。やはり海岸で聞こうかと思った時、お好みソースの匂いがした。近い!
匂いを辿って行くと何度も前を通った場所にその店はあった。よほど気をつけないと店とは気付かない。
中に入ると満席。相席するのだろうと適当に座ったら、「あんたはそこじゃない、こっち」と店の人に注意された。おお、どうやらここはそういう店か。
ラーメンを注文。他のお客さんはみんなお好み焼き。きっと地元の人たちばかりだ。
iPhoneのGPSの精度では見つけられなかった。
そして目的のラーメン。まずスープ。ウマイ。醤油ベースでタチウオ出汁らしい。塩分もかなり高そうではある。続いて麺を食べる。普通のストレート麺だが、茹で具合の堅さもちょうどいい。スープによくあっている。こんな小さな島の集落でこんなラーメンが食べられるとは。そういうシチュエーションも味付けに一役買っているのかもしれない。
お好み焼きは注文前から焼くタイプで(どんなタイプ?(^_^;)タイミングが合えば注文後数十秒で出てくる。こちらの方はまあ、また機会があれば。
ごちそうさまを言い、お金を払おうと立つが反応なし。しばらく待つとまた注意された。お好みの鉄板の奥に釣り銭が並べられているのが見えた。なかなかのローカルルールだな。
果たしてソルトウォーターヘロンは・・・?
そして釣り!
せっかく島へ来るのだから当然ロッドも持ってきている。
お昼過ぎから下げの潮流の始まる大潮のこの日、ソルトウォーターヘロンの実践初投入だ。
ひとつ気掛かりがあるとすれば、この日の天気だった。なにしろ暖かい。そして風がない。
今年の初釣りのあとの二度目の釣りの時と状況が酷似していた。
寒い季節はちゃんと寒くないと海中の魚たちも異常を察知する。
しかしやってみなければわからない。
これがタチウオ出汁の豊島ラーメン。文句なくうまい!
しかしこの店構えではさすがに通り過ぎてしまう。
流れを掴み損ねたか? ラーメンもメバルも、次回また。
目当ての港の防波堤は先行者で占められていた。しかたなく初めての港へ。しかし無反応。
すぐに切り上げ別の場所へ。今度は潮流に抗って泳ぐメバルが見えている。
リードフライもドロッパーもヘロン。しかしメバルは見向きもしない。
お好み焼き屋でも港でもなんだかアウェイな感じがすごくした。それを克服してこそ、なのもわかっている。
僕はラーメンの味を思い出しながら防波堤を戻った。