どどどっと大きな音がして水しぶきが上がった。なんだっ!?
見ると白い大きなものがこちらに流れてくる。ヤマメ? いや、キ、キャベツ?
キャベツが流れてきた。どうやら川沿いの集落の人が前方にある橋の上から残飯を捨てたようだ。オイオイ(`_')
まあとにかく頭に当たらなくて良かった(^_^;) キャベツに当たってケガしたなんて洒落にならん。
五月中旬、新緑はまぶしく気温も上がってきた。
一番気持ちのいい季節であり、よく釣れる季節であるはず。
水中から見た羽化直前のモンカゲニンフ。こうなっているのかあ。
この日は予想に反して水量がしっかりある川に来ていた。
ヌルっと魚体が水面を割り、合わすと小気味よい手応えが伝わってくる。
小さいがきれいなヤマメだ。この川はヤマメの川のはずだが、けっこうアマゴが釣れたりする。
だからちゃんとヤマメが釣れるとうれしい。
うっすら朱色をまとって、これは放流ものとはちがうな、とひとりほくそ笑む。キャベツの件では驚いたが、気分は悪くない。
キャベツポイントの前方に砂地の小さめのプールが現れた時、黄色い虫が僕の前を横切った。
水位はまずまず。虫は・・・、どうでしょう?
いや、ちょっと待て。釣りはどうした? これだけモンカゲがハッチしているのだからライズはないのか?
しかし僕はほんのわずかの砂地の一角に今立ってしまっている。まさにハッチの真っ只中にだ。この砂地エリア以外ではモンカゲが飛び立つ様子は見られない。ここだけなのだ。
やるとしたらハッチする時間を予測して、この場所をターゲットにもっと下流側で待機しておかなければならなかったのか。もちろんここでモンカゲのハッチがあるなんて今知ったのだから待機なんて出来る訳がなかった。
それでもなにか起こるんじゃないかと思い、試しに少し上流の流れにキャストしてみようとフライボックスを開けた。ああ、そうか。モンカゲロウのフライも入ってないじゃないか。
かわいいヤマメ。薄桃色がステキです。
なんとかそれっぽい#12の黄色のパラシュートがあったので、それをキャスト。
しかしサカナの出る気配はなかった。
モンカゲの羽化はまだ続いていて、気が付くと水面からぱたぱたと飛び立っているのが目に付く。
それにしてもこのカゲロウの存在感たるや、ほかの幾百種のカゲロウのどれよりも抜きんでている。
一匹のモンカゲのダンが僕の手にとまった。
その姿形も堂々としたもので、サカナだけでなくこの虫を意識した釣りをする釣り人をも魅了してやまないのもわかる。
この日はまだミッションが残っていた。昼食だ。
今年はどういう風の吹き回しか、釣りにシングルコンロとコッフェルを持って来ている。
何回か袋麺のインスタントラーメンも作って食べた。釣行でこれをやるには相当時間と気持ちの余裕がなければ出来ない。この日はいいペースでヤマメが釣れたので、早速木陰でスタンバイ。
ゆっくりと昼食を準備し、食べていくとすっかり落ち着いてきた。
ふと黄色い虫が目の前を飛んだ。それはモンカゲロウだったかも知れなかった。
その虫は新緑の林に紛れて見えなくなった。
唯一あった#12の黄色のパラシュート。
オイッスって手を上げているように見える。モンカゲはこれをよくやる。
最初は蛾かと思った。薄黄色の翅をばたつかせながら不器用に飛んでいるそいつは、モンカゲロウだった。
それにしても大型種のカゲロウはなんとも不安げな飛び方だ。明らかに体が重過ぎて飛ぶ能力が追いついていない感じだ。
水際でばたばたしているモンカゲを見つけ、写真を撮った。
どうせなら羽化する瞬間でも撮れたらなあ、と思って足元を見るとなんと水面に浮上したニンフから今まさにモンカゲのダンが現れるところだった。
慌ててカメラを構えるが、ピントが合う間もなくモンカゲは飛び立ってしまった。
羽化直前のモンカゲニンフ。ここから羽化までは早い。
新緑の川で気兼ねなくロッドを振る。気持ちいいなあ。
更に上流へ移動した。
しばらく釣り上がってみたが、その後モンカゲロウの姿は全く見なくなった。
やはりモンカゲロウの生息には砂地は不可欠で、先ほどの場所がこの川筋の唯一のモンカゲロウの住み処なのだろう。
僕はまたいつも使うフライを結び、更に釣りを続ける事にした。
うっすら朱色をまとったきれいなヤマメが相手をしてくれる。
モンカゲのプールでずいぶん長居をしたが、僕は特別焦りも感じずゆっくりとロッドを振った。
新緑のオープンカフェ。まったりのんびりゆっくりします。
シャッターチャンスを逃してしまい、どうにも気分が収まらない。ほかに羽化しそうなニンフはいないかと辺りを見てみて僕はようやく気が付いた。
何匹もの羽化したモンカゲのシャックがそこら中に浮いていたのだ。僕はゴミかなんかと思っていて気付かないでいた。
と、またぱたぱたとモンカゲが飛んでいる。そしてまた一匹。
これは、羽化している。まだまだ羽化しているようだ。
しかし辺りを見回すが、これから羽化しようとしているニンフが見つからない。シャックばかりが目に付く。
魚肉ソーセージ入り日清焼きそば、完成。
モンカゲロウが水面に浮く構造は、ドライフライのそれとは根本的に違うようだ。