2015 釣乃記
第拾八話  雨の隣で釣って寝て
梅雨なのだから致し方ない、という心の準備が出来ていれば、梅雨の釣りも案外楽しめる。
懸念点はふたつある。川の増水と釣行中の降雨だ。
この日の釣りはまずひとつめの懸念点が目前に現れた。でも釣りが不可能かと言えば、そこまでではなかった。

いい感じの増水、というのは超えていた。さすがにポイントがかなり消えている。
僕はわずかに流せる場所を拾い歩くように上流へ向かった。
また寝ちゃいました。もう寝に来てると言っても過言ではない(^O^;)
ぽつりと顔に雨粒が当たった。
ふたつめの懸念点だ。
山間部の天気の事だし思いも寄らぬ時に降り出したりするかもしれない。
チャラ瀬もやや増水でチャラではない瀬になっている。そこで一匹釣った。
これも小さいがおそらくこの川で生まれ育ったヤマメと思われ、いいぞいいぞとリリースした。

数少ないポイントを丁寧に流してみるが、反応がない。
またぽつりと雨が落ちた。
雨の川。また次の釣りに期待が持てるかも。
足早に車のところまで戻った。その頃には雨は上がっていた。
この隙にと僕は昼ご飯の用意を始めた。準備が整い、ラーメンをすすりながらiPadで雨具もレーダーを見てみた。
なんと僕のいる辺りには大雨警報が出ている。降水量50mm/h以上を示す赤い色が西側にあるではないか。でもこの辺りは次の雨はすぐには降らないだろうと僕は高をくくった。
チェアでうとうとしていたらぽつりと雨が顔に当たった。
(きたっ!!)
ムラサキツユクサ。正に梅雨の花だなあ。
増水の釣りは過去にも経験がある。そういう時にはどの沢ならなんとかなる、という僕のデータベースにアクセスし、あそこなら、と見当をつける。
これが梅雨の増水時の手順だが、それが通用しないこともある。
全く手が出せないくらいの増水だとただただ道路の上から川を眺めるしかできない。

ピチャッと、出方でかなりの小ささだとわかる。こんな増水の日でも新子が捕食行動に出るということがなんとも頼もしく感じた。
歩くのはなんとかなる。でも釣れない。
こんな日にフライをくわえてくれた、このこも奇特なヤマメ。
雨が降るとクモの巣がにぎやかに。
ぼたぼたっと大粒の雨が落ちてきた。僕は目の前に見えてきた橋を目指したが、途中に好ポイントがある。諦めるか?
未練がましくフライをラインガイドから外そうとしたが、それどこではない雨になってきた。
橋の下に駆け込んだ時にはもうほぼずぶ濡れになった。その直後、いわゆるバケツをひっくり返したと表現される雨になった。
カッパは持ってきていない。この雨が止むかどうか。
と、思う間もなく小降りになった。雲が早く流れている。
土砂降り直前に橋に到着。
鶏竜田揚げ丼を前にしつつ、帰り道の雨雲に溜息(^O^;)
雨足はみるみる激しくなった。急いで荷物を積込み、車の中で豪雨が過ぎるのを待った。
小降りになったので車を発進させた。川はさすがに濁っていた。
帰りの高速に乗ってから十数分、僕は呆気なく雨雲に追いついてしまった。
SAに寄ってまた時間潰し。僕はレーダーを見てトンネルが多い区間で雨雲を追い越そうと閃いた。
結果的には雨雲は東西に長く、追い越す前に僕は南に進路を変える。トンネル区間を過ぎて南下地点で雨雲から離脱する前に僕はまた土砂降りの走行を強いられた。