其ノ二百六十四  水辺の近況  秋風とサツキマス
なんだ!? この未確認生物は?(◎_◎;)
毎年恒例になってきた湖沼型サツキマスのペアリングと産卵の観察。
昨年は思わぬ出会いなんかもあったりしたが、まあそこはそう毎年うまくはいくまい。
ウォーキングイベントでにぎわう高原を横目に僕はこの辺りで一番標高の高い川に向かった。

「居ますか?」という声に振り向くと初老の男性がいた。この人もこの川の常連ウォッチャーのようだった。
「こっちこっち」と男性が指さした。どうやらサツキマスの姿を見つけたようだ。
僕がそこへ行くと男性は「それじゃあ」と言い残し車に乗って行ってしまった。
あっさりしてるなー。もっとも僕の場合、しつこいくらいに写真撮ったりするのだが。
早速撮ろうとするが、水面が反射してサツキマスがよく見えない。
僕は土手にしゃがみこみ、シャッターチャンスを待った。
すでに稲刈りは完了。ここは最標高の田園地帯。
サツキマスは反射している辺りばかりをうろうろしている。もちょっと手前に出てきてくれれば姿がはっきり見えるのに。上から見た時の見える見えないを水中で魚が意識している・・・、訳ないよなあ。でも僕の視線から絶妙に逃れているみたいにぎりぎりのところを泳いでいる。
それにしてもこの日は天気はいいが風が冷たかった。冷たくて気持ちいい、を少し通り越して寒い、の一歩手前くらい。
去年はどうだっただろうか。もう一枚羽織るものがあれば、とは思わなかったはずだから、今年の方が季節の進行が早い気がする。
ふと声がして顔を上げると、向こう岸から「あー、確か去年の・・。」という声と顔。・・・あー、確か去年の・・・。
やはりこの時期を狙って来られていた。去年いっしょに観察したお二方と、初対面のもうお二方。うんうん、一年ぶりでした。
川を挟んでの会話もなんなので、僕も向こう岸に行く事にした。どうやら彼らは先週も観察に来られたらしい。そして去年の出来事を教訓に、車は少し離れた場所に。・・・あれからもう一年かあ。
お話をうかがうと、今年は遡上した個体数はかなり多いそうだが、なにしろ雨が降っていない。水の少なさにいつもの観察ポイントがいくつか空振りに終わっているとのことだった。
去年は産卵床を掘る動きがかなり見られたが、今年はどうもまだそんな雰囲気ではなかった。
見えたり隠れたりするサツキマス。
目で追う僕たちも見つけたり見失ったりを繰り返していた。
あー、そこそこ。いや、あっち。水辺はもう大騒ぎさ(^O^;)
悠然とすすむサツキ艦隊。彼の地へと向かう旅路。
なかなか見えないマスを探すうち、自然と今年の釣りはどうだったとか、あそこにはあんな魚がいるらしいとか、そんな話しになってくる。
海からのサツキマスの話しや巨大化するゴギの話しなど。
今年の僕の釣果は冴えなかったから、そんな話しは景気がいいし刺激になる。禁漁になってひと月ちょっとで僕はもう来年の釣りをイメージしている。
そんなふうに話しこむ僕たちの足元では、我関せずとサツキマスたちが悠々と泳いでいた。