五月も半ばを過ぎれば、強烈な紫外線や気温の上昇、そして虫たちの入れ替わりが目に付いてくる。
朝のうち、まだカゲロウの羽ばたきがちらほら見える。しかし時間が経つにつれだんだん見えなくなっていく。
日中のハッチは減り、朝夕にハッチするカゲロウに移っていく。
今までだったら下手すりゃ朝結んだフライをずっと使い続けるということもなくはない。
だがこの時期は朝と昼とではフライを使い分けたい気分だ。
僕だって朝と昼とでは同じものは食べないんだし。
朝日を浴びるクモ。カゲロウに変わってこれからの注目株!?
パラシュートのポストが見え隠れしている。ケッキョクはコレを結ぶのだが、まずはパイロットフライとして。
朝のうちは光の具合も難しい。朝日を背にしているのだけれど、フライを見失ってばかりだった。
と、フライがあるだろうと思われるあたりで白い影が動いた。
勘で合わすと掛かっている。やった、っと思ったらバレた。
まあね、勘だから。
小鳥のさえずりがよく聞こえる。今までだって鳴いてたんだろうけど、この日は一段と聞こえる。季節で鳴く鳥も変わるんだろうな。
たまにカゲロウも飛ぶ。集団で飛ぶ姿はもう見かけない。
ちょっと前にfacebookで何人かの人に教わったのだが、渓流釣りではクモはかなりの重要種のようだ。
エサ釣りではクモをエサにノーウェイトで釣る方法は神がかり的に釣れるらしい。もちろんそのための技術も必要だろうけど。
フライでもスパイダーパターンの威力についてうかがった。
やはりかなりの効果があるとか。僕はクモのパターンはついぞ巻いた事がなく、せいぜいガガンボのフライが近いと言えば近いか。クモのフライに対する認識が改まった。
クモはテレストリアルの部類に入るのだろう。テレストリアルならアントやビートルと、ここ数年のタイイングレパートリーは決まっていた。新たなパターンを追加せねばなるまい。
アスファルトを割って。その生命力の逞しさ。
今回はテレストリアルらしいフライは持ってきていない。それでも一番濃いめの色合いのフライを結んだ。
何匹か小さなヤマメが釣れたが、これくらいだとまだピリッとこない。
前方にある国道の橋脚の陰に人が見えた。釣り師、それもフライマンだ。
僕に気付いて橋脚に隠れたように見えた。このまま上の道に上がるのだろう。
僕は気にせずロッドを振った。
「ゴギですか?」
「は、はあ。なんとか」
僕はようやくゴギをネットですくったところだった。
「ここはいい川ですねー。よく来られるんですか?」
「は、はあ。年に何回かは」
そのフライマンとひとしきり話をして別れた。彼は別の川へ行くと言っていた。
なんだかよくわからないが彼は僕がゴギを釣ったのをきっかけに僕に話かける事ができ、僕は彼が橋脚の陰から見ていたお陰でゴギを釣る事ができた、ということか。
水際でバシャッと音がした。
僕はようやく釣ったゴギをゆっくりながめる事にした。
ツツジが咲き始めた。渓が華やかになってきた。
なんだかもう日なたでは釣れないような気がしてきた。
しばらく釣り上がるが良さそうなポイントでも魚の反応はない。
この辺りも今までに相当釣り人が入っている感じだ。
適当なところで上がろうと思うが、もうちょっと先まで、あのポイントまで、とずるずるやってしまう。
崩れた小さな堰堤のところで忘れかけていた反応があった。
しかし空振り。別の筋にキャストするとまた出た。空振り。
もう一度堰堤の一番たもとに投げるとバシャッ! 空振り。
同じ立ち位置で3回出たが全部失敗。うむむ〜。
小さなヤマメ。お付き合いいただきありがとうございます。
この日のランチはペペロンチーノ。
朝はお茶漬け。同じものは食べません。
橋脚の陰の釣り人はまだ居た。こちらをのぞき見しているようだ。なんなんだ? いったい。
どうにも落ち着かなくてフライを岸際の水面にいったん置いた。
っと、置いたフライにぐるりと魚体がかぶさった。
僕は合わせる訳でもなくロッドを立てた。ぐい〜っとゆっくりロッドは曲がり、水面がバシャバシャ弾けた。
僕はようやく魚が、そう、ゴギが掛かったのだと気が付いた。
それを見ていた橋脚の釣り人も声をかけてこちらに近づいてきた。
無欲の釣果!? ゴギにはいい迷惑σ(^_^;)
強烈な陽射しを照り返す森の頼もしさ。
色濃いめのパラシュート。
次からは黒いのを用意しなきゃ。