其ノ三百三十七  島路地と海ランチ
ああ、ニャンコ先生、お待ちください・・・無理か(´ヘ`;)
サッと影が走った。いかんいかん、追いかけても待ってくれるはずがない。
ゆっくりと、警戒させないように近づいていく。
にゃんこ先生は僕に気が付いた。立ち止まって振り返り僕を見ている。
僕がじわりと歩を進め近づく。にゃんこ先生はじわりと遠ざかる。僕近づく、にゃんこ先生遠ざかる。
あー、こりゃもうダメだ。絶対距離は詰められん。
そしてにゃんこ先生は路地の奥へと消えていった。

海は満潮を少し過ぎて潮流が始まったばかりの頃だった。ただこの日は中潮であるからそう激しい潮流は起きないだろう。やや静かな下げ潮になる。
1時間もすればお昼になる。
そもそも僕はこの日は釣りをするかどうかを決めきれないでいた。カメラを持って瀬戸内の島の漁村の路地散策もいいなあと思っていたので、一応両方の用意をして出掛けてきた。

にゃんこ先生にフラれて、さあこのまま路地の奥へ向かおうか? それともカメラをロッドに持ち替えようか? 迷っているようでありながら、でも僕はすでにどうするか決めていた。
路地から一転、広い海へ出る。
路地を抜けて海へ出た。
狭い空間から一気に広がりのある場所へ出た時のギャップが爽快だった。
風は穏やかだった。日差しもあり着込んでいなくても大丈夫だ。
人にやさしい気象条件の時は釣れない、の法則が頭をよぎる。
それなら今日はその例外の日にしよう。
僕はそろそろ潮流の始まった海へ自信のドロッパーの仕掛けをキャストした。
あちこち行く島の港の釣り場によって、ここはこう、というようにだいたいのやり方が頭に入っていたが、潮流の向きが変わるというのは今まで気が付かなかった。よく見ているとふっと流れが止まる時もある。そして大型船が近くを通ったかのような波が打ち寄せ(船は通っていないのだが)、そしてまた流れが始まったりする。
ううむ、自然ってなんとも複雑で不思議だ。今さらだけど僕は驚きつつも認識を新たにした。それにしてもやはり流れの向きが変わると釣りづらい。僕はキャストの方向を変えながら防波堤を行ったり来たりした。
でもこうすることがいたずらにメバルをフライにスレさせているのだと気付くのに時間はかからなかった。
潮上に向けてキャストしリトリーブすると、潮上に向いて泳ぐ魚の正面からフライが来る事になる。
そうなるとたいてい魚はフライを避ける。
潮下から引っぱるようにフライを引く方が、反射的にでもフライに食いつくような気がする。
ところがこの日のこの防波堤の潮流は一筋縄では行かなかった。
潮流の向きが短時間で変わっていたのだ。その変化に応じてメバルも泳ぐ向きを変えていた。
猛アタックの主はかなり華奢なお方σ(^_^;)
今回も波打ち際ランチ。際すぎないか〜?(^_^;
辛うじてちびメバルを二匹釣ったのは昼をとうにまわってからだった。
それで満足できるはずもなく、僕はそれからもフライを何パターンか交換しながら粘った。
しかしスレてしまったメバルはもう僕のフライには見向きもしなくなった。
また潮流が止まった。ほぼ干潮になったようだ。
僕は場所替えと昼食を兼ねて移動することにした。この潮位だと釣りはすでに手遅れの気配濃厚だ。
そして干潮。どうするかな〜?
ランチ後ほどなくして。。。昼飯遅かったかな〜。
にゃんこ先生の漁村から離れ、島の南側の海岸を走った。
あまり変化のない海岸が続き、フライで攻めるのにはむつかしそうだった。
車が停めれて波打ち際まで降りれそうな場所があったので、そこをランチ会場にした。手早く準備しラーメンを煮ておにぎりと一緒に食べた。
正面には四国が見える。山の上は白い。僕はラーメンをすすりながらしばし島時間に身を委ねた。
ロッドはまだたたんでいない。僕は昼食の片づけを後回しにしてこの場所でロッドを振ってみた。
防波堤ではない場所ではあまりやっていないが、数投してここは良さそうな気がした。
のびのびとキャスティングできる。しかし大振りになりすぎてドロッパーを絡ませてしまった。
ダメだな。食べたあとは気が緩む。糸をほどくのも昼食の片づけも面倒くさい。
僕はもう一度腰を下ろして、だいぶ陽が傾いているのに気が付いた。