2025 釣乃記
第弐拾話  終わる釣り、終わらない夏
木漏れ日の道を辿る。日なたはすっかり暑い。
(水が染み込んでこない)水漏れするウェーダーに水が入ってこないくらい川の流れが浅い。少し快適かもと思ったりした。
それなりにポイントはある。僕は慎重に丁寧にを心掛け、フライをキャストした。
だがなかなか反応がない。朝の涼しいうちが釣りにも有利だと思う。まだ光量がやや足りない川筋にそれでもアントのポストはよく目立っていた。
釣りにプレッシャーを感じなくてもと思っているが、やっぱり感じる、この日だけは。
八月最後の週末、僕が釣りに行く西中国山地の漁期のラストの週末だ。僕が釣りを始めた時からなので、そういうものだと思っていたが、ここ数年の夏はそれがどんどん厳しいものに変化しつつあった。
猛暑日が当たり前のように続くだけでなく、夏に雨が降らない。おかげで様々な分野に影響が出ている。渓流の釣りも然りで、渇水でヤマメが釣れそうもない最悪のタイミングでの禁漁前の最終釣行ということになってしまう。今回がまさにそれだ。

この最終釣行の数日前に僕は有休を取り釣りに行っていた。その有休の前日、かなり広範囲でレーダーで赤い色になる雲がかかり、まとまった雨を降らせていた。市内でも車から出て傘をさして数十歩歩くだけで膝から下がずぶ濡れになるほどの雨だった。有休は予報を見つつ雨のあとを狙って事前に申請していたが、ここまでしっかり降るとは思わなかった。これだけの雨、このタイミングしかない。
それで翌日、大いに期待して釣りに行ったのだが、増水はほとんどしていなくて、一匹も釣れずに終わってしまった。だからそのあとの週末の本当のラスト釣行を、自分でさらにプレッシャーを増やしてしまったようなものだ。
渓流も日が高く昇ってきたら、やっぱり暑い〜(>▽<;)
サトキマダラヒカゲ。目がたくさんあるように見える(^^;)
やや深みのあるポイント、一番いい場所に落とすと一発で出た。(つっ、釣れた)
唐突だった。小さいが釣れた。僕はとにかくホッとした。
気温はグイグイ上がっているが、それからの方が反応が増えた。しかしフッキングしない。
途中、また蝶がやってきて指にとまる。蝉がうるさいくらいに鳴いている。
禁漁間際に感じる秋の気配は微塵もない。またフライに出たが空振り。僕は汗をぬぐって次のポイントにフライを投げた。



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今回の手乗り蝶はサカハチョウ。汗のミネラル目的のようです(^^;)
この時期よく見るミヤマカラスアゲハ。
最後のすやすやタイム。吹き抜ける涼風が気持ちいい〜。
この状況となってはかなり貴重な少し深みのあるポイント。真ん中にフライを落とすとピョンっとヤマメが出た。
合わすが当然掛からない。リアクションで出ただけのようだ。いることはいるが、なにしろ水が少ない。ヤマメも神経質になっている。気の抜けた流し方では食ってくれそうもなかった。僕はフライをひとサイズ小さいものに交換した。ちょっとでもヤマメの猜疑心をかわすためにできることはやらないと、このままボウズというのはいやだ。
猛暑が当たり前になった去年や一昨年よりも今年は夏の釣行はやや多くなった。
それは釣友のKK君が言った「シーズン中はできるだけヤマメを釣りたい」という言葉に触発されたからだ。
もちろん雨のあとの増水を狙ってだから、天候次第というのもある。
でも改めて渓流のヤマメを釣る楽しさを、釣りが困難な猛暑の夏に見直すようになった。
間がいいのか悪いのか。そしてこのシーズン最後の釣り。
フライをサイズダウンさせてからも無反応は続いた。時間は刻々と過ぎ、気温も上がり始めた。朝の涼しさは束の間で、渓は呆気なく夏に包まれた。
流れにも日差しが届き始め、清冽な水がキラキラ光る。だがそれはヤマメの警戒心を煽りそうで、数少ない陰のポイントを探すようになってしまう。

良い型は望むべくもない。最終日にヤマメを釣ることができさえしたら。そういうふうにハードルを下げても現実は厳しい。
渓流ラストもぐもぐはチキンラーメン卵シシトウ入り。
クロヒカゲ。木の実から何かを吸っている。
一匹が遠かった。ヤマメさん、お疲れ様でした。