ゴールデンウィークが終わったあとは、おおかたの予想通りに釣りがむつかしくなる。
連休に押し寄せる釣り人。新緑の季節の渇水。
あとには少々お疲れ気味の川だけが残る、といった具合。
そんなだから連休明け最初の週末は当然手強い。気候は一番いい時期だし、新緑の山も目に鮮やかで気持ちいい。
なのに釣果の方はパッとしない、では冴えンなあ・・・。
ま、だから行かないのかというと、行くんだよナ、ケッキョク。
季節季節で現れるその時期のランドマーク。
途中で見る川は釣りにならんくらいの渇水、というほどではなかった。
こうなるとどこに入るかでこの日の満足度が大きく左右されることになる。
いくらか見当をつけた流域を目指すが、途中に釣り師らしきクルマが何台も停まっていた。
どうする? どこへ入る? 迷いながら支流をいくつか過ぎる。このまんまじゃ決まらない。
僕は思い切ってひとつの支流に入った。
いちおうクルマは停まっておらず、僕は急いで釣り支度をした。
いまだ小さくても食欲旺盛です。
目の前をブヨが行ったり来たりしている。あー、やだ、もうこいつが出る季節か。
そういえばカゲロウを見かけない。解禁からものの二ヶ月ちょっとで水生昆虫の釣りは終わりか。ちょっと早過ぎる。
ロッドを置いて川原を観察してみる。小さなニンフはいるがひと頃のようにわらわらと出てくるようなことはない。連休明けの厳しさは釣り人や渇水だけでなく、渓魚のエサになる虫の少なさの影響度も深刻だ。
と、ふと石の上に目をやると中型のカワゲラがいた。お、いたか。それだけでちょっとほっとした。よく見るとでかいガガンボもいる。これなら水生昆虫パターンを諦めなくてもよさそうだ。
仮に今現在ハッチ自体はないとしても、ついせんだってまであったのだからサカナの記憶にはまだ十分残っているだろう。
それなら水生昆虫のドライフライにだってそんなにツレナイ態度は示さないのではないだろうか。
ダンからスピナーへ脱皮するマエグロの雌。ご苦労様です(^_^;
また石の上に虫を見つけた。
シャックをつけたマエグロヒメフタオカゲロウのスピナーだった。
ダンからスピナーに脱皮したことろだ。初めて見た。
ニンフからハッチした時ちゃんと翅まで生えたのに、なんでまた好き好んで脱皮しなきゃあならんのか? 大変なことです。

不意にパラパラッと雨が落ちてきた。雨はすぐに止んだが、これでスイッチが入ったのか、にわかに虫の活性が上がってきた。
黄色の虫が羽ばたき始めた。ミドリカワゲラがハッチを始めていた。
三月ほどの露出ではないにしてもまだまだ水生昆虫は活動的だ。
まだこの虫たちのフライを使って気が済むまで釣りをした、っていう実感はない。
暑い季節のテレストリアルの釣りもいいのだが、もう少し水生昆虫を意識した釣りをしていたい。

虫たちに背中を押されて期待を込めた一投。
わさっとアマゴがおおいかぶさった。
水面に突き刺さるフライラインと交差するようにカゲロウがかすめ飛んでいった。
ミドリカワゲラのハッチはえらく時間がかかります。
しっとりと緑の中にもぐり込んでいく。
第一印象、くたびれている。
なんだかそんな感じの川筋。予想通り水は少なめ、全体的に場荒れしているような気がした。
それは川原の砂地に残された多数の足跡を見て確信に変わった。
そこまでは一旦わかった。それは承知の上。現実を突きつけられて落胆したが奮起もした。
厳しい状況だけにいつもより丁寧にキャスト。それだけで釣れる気がしてくる。

・・・が、現実はアマクない。
およそサカナの反応というものが一切なかった。
キベリトウゴウカワゲラ。ドスの効いた風貌。
ガガンボも負けてはおりませぬ。見合って〜。
ニンフが立ち上がった!
ニュルッと出た〜。
思い掛けなく虫が次々と姿を現してきた。
決定的にその時のハッチでサカナの反応が決まるという状況ではないかもしれないが、フライフィッシングをやるからにはやっぱりその場に水生昆虫がいて欲しい。
虫と渓魚と釣り人の不思議な関係は、良好である時もあればいくらか関係が崩れることもある。
その時々で一喜一憂しながらロッドを振るのが、この釣りをする人の常だろう。
それは決していやなことではない。むしろそうあって欲しいと願っている。
まだまだ大きくなってもらわないと。しっかり食べてね。
そして背中が割れて。