F.F.雑感
其ノ六百四十三  フラットに雲が流れて  
また魚影が見えた。やはりここは魚影も濃くいい場所だ。
投げようとするとまた曇った。ああもう、間が悪い。大体の位置はわかっているから投げてみたら、散っていく姿だけが見えた。
陽が差すのを待ち、魚影を探して歩いた。歩いているうちにも陽が翳りまた差すという繰り返しが続いた。まばらに浮く雲が次々と流れていく。
気がつくと僕の割と近くに底をついばんでいるやつが1匹いる。慎重に投げようとするとまた曇った。これじゃ見失ってしまう。
前回の釣りを今年のフラットのラストにしようと思っていた。始めてから5時間釣れず、帰る間際に2匹釣れたという、なんとも紙一重の釣りだった。それでも釣って終わるというやつはクリアできるのだから、これで終わっても良かった。

少し前にほかのあまり行かない川の河口付近でチヌ狙いで釣りをしていた。知り合いがその川の近くに住んでいて、フライでチヌを釣ってみたいと言っていたので、日時を合わせて行ってみたのだ。その時はたまたま高潮注意報が出ている日で、上げ潮を狙う予定が、潮位表と全然違う速さでみるみる潮が上がってきて、釣りは1時間もできずに終わった。
だからその雪辱を果たすというか、その川の攻略法を開拓するというか、そうしたい気持ちがくすぶっていた。高潮の日も1時間とはいえ、その間に数回のアタリがあったので、悪くない川だと思っていたのもある。
この川はTさんが前に新規開拓でやっていた川でもあった。Tさんはそのあとはあまり行っていないようだが、改めて僕のやった情報を共有して眠っていた好ポイントの掘り起こしをするというのもいい。

でもそれは来年でもいいかなという気もしないでもない。チヌ釣りの新規ポイント開拓をシーズン終盤の釣りでわざわざしなくても。それにもし釣れなかったりしたら・・・。
いいファイトでした。魚体も綺麗なチヌさん(*^^*)
新しい釣り場でしたが、なかなかいいかも(^^;)
結局有休を取って高潮でちょっとしか釣りが出来なかった河口にやってきた。この近くに住んでいる人とは都合が合わなかった。
いきなりのバラしだったが、僕は気を取り直し次の魚影を探した。すぐに見つけられたが、陽が雲に隠れ日陰になって見失った。
空を見ると小さな雲がまばらに浮いている。すぐ陽が出るだろう。待っていると陽が差してきた。もう魚影は居ない。
まだ午前中で陽が高くなく、風で波立っているのもあって、曇ると魚影が見つけづらい。
山肌に影を落としながら、千切れ雲が浮いている。
何かモゾモゾしている。ロッドを後方に寝かせながら引くと、ズズっと動き出した。(掛かった!)僕はやったとばかりにリールを巻いた。だいぶ岸は沈んでいる。どこで写真を撮ろうかと後ろを見ていると、フッと軽くなった。
(バレた〜っ! 写真撮る場所を探したりしてるから!)
でも落胆する必要はなかった。まだ魚影は見える。やる気がありそうな、底を突いているやつだ。
僕はすぐにそいつにキャストするが、風で流され離れた所に落ちた。今回も風が敵か。
フライに不安はない。また頼みますよ。
約三ヶ月ちょっとの間の活躍。道具さん達もお疲れ様。
最小サイズ記録更新(^^;)。 
岸際の砂地が徐々に沈んでいる。小潮だからゆっくり釣りができると思ったが、どうもこの川は満ち上がってくるのがほかの川の河口よりもだいぶ早いようだ。地形の傾斜が緩いから潮の満ちるのが早いのだろう。
モタモタしてたら前にここに来た時の二の舞だ。僕は次の魚影を探して移動した。
途中にある潮止めの段差の低い堰堤を越えて、その上流へ。堰堤は水中に没しているから、チヌも堰堤を越えて上流へ上がっているはずだ。
いや、見えている。日陰になったが魚影はギリギリ見える。その横にキャスト、散っていない。
リトリーブするとフライに気づきついてくるのがわかった。食え!
しかしチヌは食いつかずただついてくる。僕はそのままラインを手繰るが、ラインとリーダーの結び目がトップガイドの中に入った。まだついてくる。すぐ目の前だ。僕は強めにラインを手繰った。すると反射的にチヌが食った。強い引きで一気にラインが出ていく。また雲が流れ、陽射しがフラットを照らした。
チヌは釣るけどあまり食べない。でも地元産がスーパーにあったので(*^^*)