其ノ四百五十  若潮の夕まづめの複雑
三週連続で、海でフライをやっている事に興味を持たれ、声を掛けられている。
珍しさもあるだろうし、すごいと思われている感が伝わってくるので悪い気はしないのは確かだ。
この日もそのパターンがいずれあるだろうと予想していての釣りだった。

砂浜でもメバルは釣れると聞いていたので、まずはサーフで数投。反応は0だった。
サーフのキャストは気持ちいいが釣れる気がせん(>▽<)
同じ七つの橋の島の2番目の島、サーフの次は初めての港の防波堤でやってみた。
先行者の親子連れは足元に糸を垂らしてなにやら釣っている。と、お父さんの方が良型の魚を釣り上げた。アイナメだった。
干潮時刻の、露出した石積みの間の穴釣りだ。やるな〜。
僕のフライにはまたしても反応はない。若潮・正午干潮、かなり釣りづらい条件ではある。
もぐもぐタイムのダブルカップ、ダブル汁物はもはや必須(^^;)
潮の具合から、この日は日中の釣りにはあまり期待していなかった。夕まづめで手堅く良型メバルを手に出来る目論みで島へやってきていた。
干潮の昼になり、昼飯を食べたあとに考えていた事を試してみた。CX-3にして三年ちょっとになるが、車中泊はできないと決めつけていた。しかしリヤシートを倒しフロントシートも前に出して倒すと、対角線上ではかなり長さが稼げる。体を横たえてみると171cmの僕でぎりぎり足を伸ばして寝る事ができた。ゴツゴツした部分があって気になったがそれでも1時間も眠ってしまった。キャンプ用のマットを持ってきていれば完璧だったな。
夕まづめを狙う三番目の島の港に向かった。
目当ての場所には年配の夫婦連れが陣取っていた。でも少し離れた横が空いていたので僕はそこでやればなんとかなると判断した。
夫婦連れはしきり貝を割っては海に落としている。この人たち、なにやってんんだ?
しかし、その夫婦連れの周りに数人のギャラリーが集まっていた。なんなんだろう?
すやすやタイムも本気寝の体制が整った。
手だれのアコウ釣り師夫婦。あとのマナーもバッチリ。 活性のバロメーターのアナハゼ先生だったのに。
やにわに奥さんの方がロッドをあおった。1mくらいのショートロッドだ。
文字通り満月のごとくロッドが曲がり、少しして水面に赤いかたまりが現れた。
アコウだった。

僕の見ている前で3匹、うち2匹は地元のおじいさんにあげ、1匹は小さいとリリース。
おそらくクーラーボックスには僕が来る前に釣った良型アコウが入っているに違いない。
日中はかなり気温も上がり、夏を思わせる雲までが。
手早く釣り座をきれいにし、片づけて夫婦は帰った。若潮の潮流の穏やかな条件で狙う見事な釣りっぷりだった。
ギャラリーたちは僕には見向きもせず散っていった。
気を取り直し釣りを始めるが、堅いと思った夕まづめでも若潮はこれほど釣れないとは(地元の人いわくやわい潮(柔らかい潮))。
そしてようやく釣れたメバルに僕はなんだか申し訳ない気がしていた。
かろうじて、若潮の夕まづめの一匹。