春は海からやってくるのだろうか?
冬は空からやってくる。だから標高の高いところから寒くなる。
暖かさは標高の低いところから徐々に登っていく。
実はこれがやっかいだ。なぜならぐいぐいと標高を上げ下げしつつ移動するこの時期の釣りでは、季節が行ったり戻ったりを繰り返すことになる。
・・・この日もそんな釣りになった。
一分咲き・・・くらいだなあ。あと数日で見ごろですσ(^_^;)
前回の釣りであろうことか車のフロントウインドウを割ってしまった。
この日、修理が完了した、その足で川へやってきた。
県境の峠を越え少し下ってきたが、見覚えのある車を見つけて外に出たらけっこう寒かった。
車の持ち主は釣友のmGだった。久しぶりの彼は変わらぬ様子で、僕が近づいたのに気付いた時の驚きようも変わらなかった。
順当にハッチを開始し始めたマエグロ一族
mGと別れ、僕は更に下流へと向かった。目指す支流との合流点へはだいぶ標高を下げるはずだ。
mGと話しをしている時はかなり肌寒かった。それが合流点に着くと晴れ間が広がり、薄手のフリースでちょうどいいくらいの気温になっていた。
昼食を済ませ、川に降り立つ。
ハッチはちらほらとあるようだがライズは見つけられない。
とにかく僕は有望なポイントにフライを流してみた。
この季節は開けた本流筋で釣りたい。
大場所で闇雲に投げてもだいたいのところ釣れる気がしない。やっぱりこういう場所ではライズを見つけてキャストするやり方が相応しい。
三月下旬、海からの春はもう十分ここまで届いているはずの川だった。土手の桜はひと枝にひとつかふたつ花が開いていた。来週には見ごろになっていそうだ。そして徐々に暑さを感じ始めてきた。日差しが強く感じる。紫外線も相当なものだろう。もう一枚脱いでくれば良かったか。
合流点の支流の方をちょっとつついてみたが、反応無し。本流を上流へ向けては歩けないので道に上がった。集落はあちこちに花が咲き、桜を待たずして春の気配が漂っていた。
橋の上から川を観察すると、大型のカゲロウが目の前を飛び過ぎていった。いよいよハッチが始まったようだ。
マッチしてるでしょうか?(^_^;
再び川に降りると気持ちの昂ぶりを増長するかのようにカゲロウの飛翔が目に付いた。かなりの数だ。
水際の石を見るとマエグロヒメフタオカゲロウのダンが何匹もいた。今まさに石の上で羽化しているものもいた。
石面羽化は直接ヤマメが捕食行動は起こすまいが、マエグロが動き出したのならほかのカゲロウも羽化し出しているに違いない。
僕は水面にカゲロウとライズの形跡を追った。
大型種の正体はナミヒラタカゲロウ。水中羽化の代表種。
中くらいのプールのど真ん中に突然カゲロウが現れていた。
まさに水面で羽化している。いやこれは川底で羽化してダンのまま浮上するナミヒラタカゲロウのようだ。
次々と水面に現れるダン。僕はつばを飲み込んだ。
待つ事しばし、ライズは起こらない。これだけハッチしているのに。
魚が・・・いないということか?
のどかでいい集落なんだけど、川に魚がいなきゃあなあ〜。
その程度のキャストとフライでは、まだまだ食べる訳にはいかんのう( ̄^ ̄)
僕はあきらめてフライをキャストした。キャストする時点であきらめているということが、なんともやりきれない。
予想通りフライに出てくる魚は居なかった。
別のプールでも同じ状況だった。ハッチあり、ライズ無し。
車のところに向かって土手を歩きながら考えた。
ライズが期待できそうな場所。
やはりあそこしかないか。僕は再び標高を上げることにした。
それは春から遠ざかることを意味していた。
mGと出会ったその更に上流まで戻った。
過去にこのポイントでライズを見たのは四月下旬だった。それでもここに賭けるしかなかった。
車から出るとグッと冷え込んでいるのがわかった。川は小さな虫が飛んでいた。
川原に座ってライズを待つ。太陽は山の稜線に隠れてしまった。
水面に変化はない。どうするか?投げてみるか?
僕が立とうとしたその時、水面にひとつ、ふたつと水紋が広がるのが見えた。
mG好みのフラットな流れ。
道を歩く釣り人の出で立ちもここでは違和感はない。