其ノ二百七十六  初釣り 島の夕暮れで
今年も懲りずにやってきました。果たして・・?
あんまりごろごろしてたら動き出すのが億劫になりそうだなあと、意を決してタイイングを始めた。
ロックフィッシュ用のオフセットフックを買っていたので何本か巻く。
時刻は昼に近く、もうすぐ満潮だ。今から出れば島に着く頃には下げ潮の潮流が始まっているはず。干潮は19:00くらいか。
僕はダンベルアイの接着剤の渇き具合を確かめた。
徐々に心細くなる光量。海の中はどうなっているの?
風は弱まらず、フライへの反応もなく、時間だけが刻々と過ぎていった。
先に来ていた釣り人達はワームでやっているようだが、釣れている気配はなかった。
軽トラの中には二人乗っているが釣りをするふうではなかった。
僕はフライをあれこれ変え、場所も変えつつやってみるが一度の反応もないままだった。今日はダメか・・・。
釣れないは腹は減るはで、こういうのは目に毒です。
潮流の真っ只中で釣り開始。若干海水が濁っている。先ほどまで降っていた雨の影響か?
表層にチビメバルが見えている、その下にいるはずの大型を狙う。
午前中巻いた赤い魚皮フライをキャスト。オフセットフックでダンベルアイの収まりがよく、僕としては気に入っている。
濁りの水中でなんとか見える赤いフライが沈んでいくと、チビメバルたちはささっと避けていった。うむむ〜。
釣りのメインは渓流での鱒類を釣ることなのに、初釣りだけは毎年海でというのも変ではあるがまあいいか。
フライでやる、というところに重きを置いて今年の釣りを占うのだから。
出掛ける時はそんなふうに息巻いていたが、目的の島に近づくにつれ強まる風と降り出す雨に一気に気持ちは萎えていった。
晴れるという予報は沿岸のことであっても島のことではなかったかもしれなかった。
出がけに巻いてきたフライ。効果のほどは?
行きたい所へ向かって飛べてるのかなあ?
いつものように橋を渡り繋いでいくと雨は止んできた。どうやら雨雲は北上しているらしく、南下する僕は雲とすれ違ったみたいだ。ただし風はまだ吹き荒れていた。
今回はあちこち寄らずまっすぐ目当ての港に向かった。港の駐車場は車で溢れ返っていた。どうやらそれは帰省している人たちの車のようだった。釣り人はというと、防波堤に3,4人立っているのが見えた。正月とは言えやっぱり来る人は来るんだよな。
釣り支度をし、僕も港の防波堤に向かった。防波堤の付け根の所には軽トラが停まっていた。その先に若い人たちが陣取ってキャストを繰り返していた。
強い風は上空の雲を吹き飛ばし、みるみる晴れ間が広がってきた。これだといちおう予報は当たったと言える。
そして日没。ゴールデンタイム突入か!?
ワームの彼らは帰っていき、入れ替わりに別のグループがやってきた。その人たちも帰った頃、やにわに軽トラの二人が外に出てきて釣り支度を始めた。
日は島の稜線に隠れ、徐々に光量が減りつつあった。薄暗くなり始めると気持ちが急いてくる。
そして軽トラの二人の釣り開始とともにあれだけ吹いていた風が止んだ。
夕凪? そして夕まずめか?
食いついた瞬間のゴゴンッとくる手応えが全て。
干潮が近づき、潮流の音もやがてやんでいく。
軽トラ釣り師はアジ狙いのようで、次々と釣り上げ始めた。
干潮まであと少し。今が下げ7分、この日の時合いということか。
と、見とれているとゴツンッときた。今まであれだけ反応がなかったのに、いきなりきた。
そういうこと? 僕の死んだようなフライは一気に息をふきかえした。
今年の釣りがようやく始まった。