其ノ二百八十 水辺の近況 冬晴れと地吹雪
水源の里の神社へお参り。
雪の谷から更に標高を上げて、県境の峠へと向かった。
一番標高のある辺りまでいくと風が猛烈に吹いていた。道路に降り積もった雪が風で吹き飛ばされ、地吹雪となって視界を塞いだ。
谷にいたときの、降り積もるけれど静かに降る雪とは対照的な状況だった。
峠の集落に着いた時、強風で雲が吹き飛んで青空がのぞき出した。
この集落で毎回撮る流れ。今年は凍っていなかった。
僕が釣りに行く水系の源流でもあるこのあたりなのだが、およそ釣りをイメージするにはほど遠い気象条件ではあった。
もちろん川の流れをのぞきこんでも生命反応など感じられるはずもなく。
そう考えると僕はいったいこんな雪の中の川を見に来てなにをしようと思ったんだろう。
彼方で立ち上る地吹雪が徐々にこちらに近づいてきていた。
雪原の彼方で地吹雪が暴れ出す。
何年か前にこの集落をこの時期に訪れた時よりは積雪は少なかった。
しかし今回は風が強い。上空の雲はみるみる姿を消し、目の前に広がる景色と体感温度ととに妙なギャップがあった。
雪原の中にぽつりと佇むこの集落の神社へ向かう。
大漁祈願というつもりもなくはないが、まずは釣行安全をお願いした。
去年から仲間内では神社巡りがひとつのブームになっている。もちろん去年からとかに限らずそうしている仲間もいたのだが、去年から更に何人かに強く浸透した感じだ。
神社についてどう向き合うかは人それぞれだが、神社に赴くことをきっかけに気持ちや考え方を新たにすることは良いことなのだと僕も思えるし、実際に変化を感じ取ることもできている。
それがこんな雪原の地吹雪吹く中での参拝なら、気分も御利益も違うような気がした。
立っていられないくらいの暴風地吹雪がやってきた。じっと立ちすくんで通り過ぎるまで耐える。
地吹雪に包まれている時、何も見えない中でこれが川の流れの一番最初なのかも知れないと思った。この雪、そして雨も。それらがないと川の流れもそこに棲む魚の存在も始まらない。
そうか、そんな始まりの時を感じたくてここに来ているんだ、と僕はようやく気が付いた。
雪の里を訪れて、何を思う、自分!σ(^_^;)