その川は前に来た時にも気温の急激な変化に出くわしていた。
今回も前日の雨になんだか嫌な予感がしていたが、案の定。
予報は外れて雨が残っていた。風も強め。カッパを着て川に降りるが、とにかく寒い。
虫も飛ぶ訳ないしライズもある訳がない。
それでもフライを流しながら歩くが、だんだん釣れる訳がない、とまで思い始めてきた。
・・・こんな釣り、楽しい訳がない。
また・・、季節が逆戻り(´ヘ`;)
早々に最初の区間をあきらめ、場所を変える事にした。
雨はまだ止まない。次の入渓場所は他の釣り師らしき車は見当たらなかった。
今度こそはと思い直して川に降りた。風にあおられうまくキャスティングできない。
なんとか風の止み間にキャストして、思うところにフライが落ちても、ただ流れ過ぎるだけだった。

結局二ヶ所目の場所も生命反応を確認する事はできなかった。
雨に洗われたシコクスミレ。やっぱり寒そう。
昼を過ぎて、この川をあきらめる決心がついた。
悪い川じゃないはずだけど、僕との相性というかタイミングが噛み合っていないようだ。
寒さは体力も奪った。結果、空腹は増長され、とにかく昼ご飯を食べようと思った。
思いついたのは最初のとはそう離れていない別の支流だった。
そこにはバンガローやキャンプ場があり、テーブルとベンチもあったはず。
もはやそこで昼ご飯を食べる事で頭が占められてしまった。
そもそも虫が見えない。なににライズしているのか? 結んでいるCDCダンではダメなようだ。
イメージしてみる。きっと水面下だろう。羽化寸前でもぞもぞしているやつ。スティルボーンか。
シャックが弾かれそうな気がする。僕は#20のスティルボーンを結んだ。これなら余裕でシャックごと食うのではないか。

気が付くとすっかり寒さが遠のいていた。ようやく季節が追いついてきたようだった。
有望ポイントその1。フラットな流れだが水深はまあまあある。なにより日当たりがいい。
目立ったハッチは見られないが、とにかくやってみる。
川に降りるとまた風が吹いた。しかもアゲインスト。上空の雲はかなりの速度で流れている。

この風景を見ていると解禁一回目の釣りを思い出す。
この支流は毎年解禁後最初に来ていた。そして必ず晴れだった。晴れの特異日、いや特異河川だったのだ。
マルちゃん正麺ソーセージ入り。ごはんにはのりたまをかけて。
釣りで行ったり来たりして。そして春も・・σ(^_^;)
マエグロのダンも細々とハッチ。
手早くストーブを着火し、水を入れたクッカーを火にかける。袋ラーメンを用意しする。具は家で切ってフードコンテナに入れてきている。湯が沸き、麺を入れて少ししてから具も入れ、煮込む。最後にスープを入れ、ありあわせで作った弁当を開ける。
ここまでおよそ10分。このあと食べるのにもう10分。満足してディレクターズチェアに座ったまましばしぼーっとし、おもむろに立ち上がり片づけまでに10分。計30分でチャージ完了。

さて、どうするか? 雨はもうだいぶ止んでいる。晴れ間が出てきた。風もあまりない。
この支流だと、有望なポイントは・・・、あるにはある。
有望ポイントその2。今年すでにライズに遭遇し、それをなんとか獲れたポイント。ただあれから2ヶ月近くが過ぎている。
果たして、今回もだなんてそう都合のいい話が・・・あった。

その1は結局反応は無く、一日釣りをしていてこれほど魚の気配がないのも珍しかった。
その2は川沿いの土手の上からでもライズが確認できた。この日釣りを始めてからおおよそ七時間が経とうとしていた。
川の流速をヤマメはわかるだろうけど、雲の流速は感じているのだろうか?
小さな沢との合流点、小さな水紋が広がる。
キャストするが風で押し戻されて届かない。しばし待つ。
少し弱まり、キャスト。届かない。しかしフライに出た。
カワムツだった。この日散々釣り歩いてようやくの一匹目がコレか!!
ライズはまだ続いている。風が完全に止んだ。キャスト。
今度は届いた。しかし出ない。もう一度。出ない。ライズは止んでしまった。
いったいなにを食っていたのか、今もって不明。