初夏の日差しを浴びて川も暑がってます。
車に戻りひじの擦りむいた所に消毒液をかけ、大型の絆創膏を三枚貼った。
エマージェンシーキットは使わないに越した事はないが、いざと言う時を考えて。
まだ痛いしこれから腫れてきそうだった。でもこれくらいで済んでよかった。身動きのとれない状況になっていたらと思うとゾッとする。
全くの油断だった。川に降りてからはよく気をつけるが、降りる前の隙があったということか。
2014 釣乃記
第拾壱話 その川の予感
う〜ん、イトが見えんし結べん(^_^;
カエル先生、僕に忠告しにやってきたの?
しっかりと息づいてくれて、今日も会えた。
なんとなくしゃきっとしない朝だった。まあそういう時もある。僕はどの川にしようか決めきれないまま高速に乗った。
なんだか緊張感というかわくわくする感じがしない。
せっかく釣りに行くのにこれはないなーと思った。

出掛けるのが遅かったせいもあるが、釣りのできるエリアに着いたのは昼前だった。
とにかくどこか入る川を決めないと。日が高くなりヤマメたちの反応も鈍る頃だ。
いよいよ入る川がなくなってきた。ここまで間の悪いことってなかなかあるもんじゃない。
こうなると逆に幾分落ち着いてくる。これ以上焦ってもどうなるものでもない。
川はいくらでもあるのだが、五月下旬の真っ昼間に、となるとどこでもいいという訳にはいかずかなり限られる。

数十分後、僕はずいぶんと久しぶりの川にやってきた。かなり記憶からも薄れかけていた川だった。
(こんな川だったかなあ?)と記憶を探りながら川沿いの道を遡る。細い道、川幅も上がるほどにどんどん細くなる。
まだ渇水とまではいかない感じの水位で、水の透明度は特筆ものだ。とにかく始めてみる事にした。
岩づたいに降りていると下流側に良さそうな溜まりが見えた。そこもちょっとつつこうと下りの岩肌に足をかけたら、あっという間に滑った。左ひじをなかなかの強さで打ち付けた。
(ずいぶん久しぶりの川だけど、痛みでロッドの様子を心配するどころじゃなくうずくまってしまうくらいの打ち方もこれまた久しぶりだなあ)などとのん気だかなんだかよくわからないことを考えながら痛みに耐えていたのを覚えている。
脂汗が出る。しばらくじっとしていた。ゆっくりひじを動かすと動くので、骨とかは大丈夫のようだ。
食べてエネルギーを蓄えねば。
エマージェンシーキット。いざと言う時のために。
少し休んでまた川に降りてみた。ホールするとやっぱり痛む。
このまま帰ろうか、とも考えたがなんだかそれじゃあ朝からの間の悪さからこの転倒に至るまでやられっぱなしになってしまう。
それはやっぱり口惜しい。

僕は余分な動作は一切せず最少キャストで数匹のヤマメを釣った。
釣る事でいやな流れを断ち切れたと思った。
まだ先にポイントは続いている。ここからは普段通りの判断で。ならまだ続けるに決まっている。
久しぶりの川の久しぶりのヤマメ。そして痛みも(^_^;
(あ、またここもか)
林道の先に停まっている車に僕は落胆した。ここで三ヶ所目だった。
確かに時間は出遅れた感はあったが、こうまで行く先々に先行者が居るとは。
僕は頭を巡らせて次の川を決めた。そこへ向かう途中前方に軽バンが走っていた。
(まさかね?)僕はひょっとしたらという疑念を押し殺し、その軽の後をついて走った。
次の川へ向かう林道、その軽バンは林道の入り口から奥へと入っていった。