2014 釣乃記
第拾伍話 夏の逃げ道
まだまだゴギは出てきそう。僕たちの釣りは終わらない。
ふう〜っ、自然の中では想定外のことがおきる〜(; ゚×゚;)
渓の光に溶け込むO君。
雨の国道を西へ。釣り場に着く頃には止んでいる予報だ。
雨上がりの渓、おぜん立てはばっちり。この季節にこれ以上の条件はあるまい。

今回はO君という初めてのパートナーとの釣りだ。若い人だがだからといってあなどれない。いろいろと学ぶこともあるにちがいないと思っていた。
O君の家で彼をピックアップし、北へ向かって走る。釣りで高速を使わないのは久しぶり。北部へ向かうのに近いルートがあるからだ。
なかなか釣りに行けないO君はこの日が五月連休以来の釣りだった。
ずっとこらえていたものが吹き出すかのようにO君は最初のゴギを釣り上げた。
キャスティングにもウェーディングにも不安はなく、O君はまったくのいっぱしのフライマンだった。
この日僕は彼の巻いたフライだけで釣るつもりだ。タイイングが好きだという彼のフライを見ていると、楽しみながら巻いてできあがったということがよくわかる。
緑のフィルターでこされて、やさしい波長だけが降りてくる。
ようやく僕のロッドを曲げてくれたゴギさん。
目的の川に向かうための峠の手前側。渓谷沿いの道に岩が崩れ落ちていた。その手前ですれ違った軽自動車の人が教えてくれていた。
道路に落ちた岩はぎりぎり僕の車が通れる幅を残していた。これが落ちてきた時は必ずある訳で、その時に出くわさなくてよかった、ホントに。

峠まできた。トンネルがあるのだが、ここでまたゾクッとした。普段見えるトンネルの先の出口の明かりが見えないのだ。原因はトンネルの向こう側がかなりの濃霧で光を遮っていたからだった。

そんなこんなでようやく川が見えてきた。しかし入渓場所の離合帯には車が停まっていた。
残念、一番の狙いの川は断念し次の候補へ。
今度は先行者はいないようで、僕たちはここにしようと準備を始めた。
川に入る頃、予報通り雨は上がった。まだあたりには湿気が濃く漂っているがじきに薄らいでくるだろう。

川の状態は気持ち増水気味。釣りにはもってこい。O君、今日はやったかもしれんよ!
青空がのぞいてきた〜!
O君が良型をバラしてかなり口惜しがっていた。
僕はフッキングの調整が出来きれないまま釣りを続けた。
それでも釣り上げるにしろバラすにしろ、間隔をあけずに反応が続く釣りは楽しい。

気が付くと少し残っていた霧もメガネを曇らす湿気も消えていた。
木々に覆われて少しだけのぞく空は青く晴れていた。
僕たちは渓に深くもぐり込んで、今が夏だということをすっかり忘れていた。
僕の投げるフライにゴギはよく出てきたがフッキングでミス連発。
O君はフライに出たゴギは堅くキャッチしていた。
こりゃいかん、ちょっと焦ってきた。O君フライの別パターンに変えてみたりしているのだが、どうやら僕のフッキングのタイミングがずれているようだった。
久しぶりの釣りだから勘も鈍る、・・じゃあ困るんだが。
入渓してからだいぶ経った頃、僕は魚の感触を忘れかけていたがなんとかゴギが釣れてくれた。
水と緑が育む川が好きです。