直線距離で約100Kmのところまで気圧の谷は接近していた。
対して自宅の僕はと言うと、その気圧の谷に向かって車を走らせようとしていた。
向かう川の辺りは15:00には降り出す予報だ。それまでに勝負をつける、となんだか自分でこの日の釣りのハードルを上げてしまったなあ。

川には9:00に到着。うっすら陽が射していて、これから降り出すというような気配はなかった。
やや増水気味。この場合は歓迎する水位。
魚影の濃さは健在だった。
解禁から三ヶ月経てばたいていの川は魚の数は減っていると思っていた。
ただ、どう見てもひと月前に来た時とたいして変わらない大きさばかりだ。
ひと月じゃそんなに変わらなかったか? それとも魚が入れ替わった? 前回はもっと小さかったヤツが少し大きくなり、それを今僕が釣っているのかも。
じゃあ前回僕が釣ったヤツらはどこへいった?
思い通りにならないから面白い。でも面白くない。不思議〜(-_-)
この川はひと月前にも来ていた。その時はサイズはイマイチだったが、体高のあるアマゴがたくさん釣れた。これが数は減っても残ったヤツが大きくなったら・・・。
そんな目論みをしたためつつ、ひと月後にやってきた訳だ。

あ、出た、とその後いくらかのプロセスを経てアマゴが手の中に。テンポよく釣れる。なかなかイイゾ・・・サイズ以外は。
いや、これからだ。この先期待のポイントが次々とやってくる。
期待だけが先走りしていたが、どうも予想していたようなウマイ話にはなっていなかったようだ。でもまだ可能性は0ではない。
増水気味だったので朝からパラシュートを結んでいたが、ここらでカディスに変えてみることにした。
堰堤下のプール、バックも取れるので離れてキャストした。一投目、着水と同時に水面からアマゴが飛んで出た。
合わすがかからず。なんだ今のは? アマゴもアマゴだが、それを惑わすカディスの力もすごい。そのあとのキャストでもパラシュートの時とは全く違う出方をする。これなら川底に潜む大型アマゴだって出てくるに違いない。ふたつめの目論みが動き始めた。急に見通しが明るくなってきた。
このパターンでもティペットが・・・。
夏の高気圧や偏西風のせいでこの雨粒が落ちてくる。
接近する気圧の谷にこちらから近づいて行ってたのでそうなるのも当然だが、予報よりかなり早く降り始めた。
降り出す前に勝負をつけるなんて息巻いていたが、時間切れか。
やり変えたティペットに僕はまたカディスを結んだ。目の前には広めの堰堤プールがある。
今度はスピンさせないようにワイドループでゆっくり投げようかと思ったが、強まる雨足にけおされないように、僕はまた強くロッドを振ってしまった。
カディスでしばらく釣り上がる。
渋るアマゴを引きずり出す威力があるはずだが、だんだん反応がなくなってきた。
よく見るとティペットが縮れている。枝に絡んだりとかしていないが、いつの間に。
引っ張ってクセを伸ばそうとしてふと思った。このフライだとスピンしやすいのか? 
ティペットをやり変えようか、フライも変えるか? いやカディスは期待できそうだし、などと考えていたら手にぽつりと冷たいものが落ちた。
雨粒の水紋がひろがる田んぼ。これがライズリングだったらなあ(^_^;
ゆるゆると、天気は下り坂へ・・。
ぽつりぽつりと、きましたよ〜。