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バッグの中を探すまでもなかった。もう着るものはない。
ありったけのものを身につけて車の外に出ると、そこは冬だった。 それでも釣りを始めようと思ったのは風が止んでいたからだ。 ここへ来るまでの様子のままだと帰るしかないかと思い始めていたほどだった。 川に下りてキャスティングを始めたが、なんだか体がおかしい。 そりゃそうだ。15度も違うんだから。
そう簡単に春にはなりませんよ、と・・・(>_<)
前回の釣りの時は最高気温が23.8度にまで達していた。どうりで汗をかいたはずだ。
そして翌日にあたるこの日、朝はまだ前日の暖かさを引きずって20度近くあった。 だから部屋を出る時、たいして着るものを用意する気にならなかった。 細かい霧雨が落ちてきた。上空の風にのって谷が霧に覆われ始めていた。
一輪だけ咲く梅を見ると、逆に寒々としてくる。
低い堰堤が続くこの川はポイントになるところが多い。ていねいに攻めてみるが反応はなかった。
この堰堤区間より下流はまるで台風のような風が吹き荒れていた。堰堤区間は谷が狭まっているせいか、ウソのように無風だった。 正午を過ぎ、気温は7度にまで下がっていた。夜が明け、時間が経つにつれて気温はどんどん下がってきていた。 よもやこんな天気になろうとは思いもしなかった。
堰堤下プールでようやく出たさびたヤマメ。
寒々とした景色。何度目かの堰堤を前に僕は昼ご飯のことばかり考えていた。
こんなに寒けりゃなんかあったかいものでも食べない事にはやってられない。 もってきたインスタントラーメンが目に浮かぶ。川に立ってこんな事考えているようではすでに釣りは終わっているようなものか? 熱いスープを口にするのを想像した時、僕のフライを口にするヤマメが現れた。
ダメージを負ったダン。果たしてどれだけのダンが飛び立てると言うのか?
そしてまた堰堤、また反応なし・・・。
そわそわ落ち着かないのは虫が飛んでいるからだ。まず間違いなく飛ぶだろうと予想はついていた。
そうなると、どの時間にどこに居るか? が問題になってくる。 ここからは読みの勝負だ。 僕のにらんだその支流の下流域はここ数年めっきりダメになったと仲間たちからの情報はあった。 とはいうものの、ハッチがあればライズもあるのではないか? なにかあれば、という期待は解禁から季節が進むたびにおおきくなっていく。
このフラットな里川にハッチとライズを期待したのだが。
春のことだから多少は風はある。風の止み間にキャストしながら、流れの様子に見入った。
大型のカゲロウが風に流されていった。水面はというとこれといった変化はないままだ。 ライズさえしてくれれば必ず釣ってみせる、とそんなイメージが頭の中にはとっくにでき上がっている。 自信はあった。大きなカゲロウに惑わされず、#16のCDCダンをすでに結んでいた。 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]()
ガーン! マルちゃん正麺、大きくなってない?
でも無事に魚肉ソーセージ入りラーメン完成(^_^;
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色とりどりのカゲロウが目立ち始めた。
ヒラタのニンフもついに始動。
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三月中旬としては、申し分ない天気。
ヤマメにとってライズは生死の境界線なのかも。
15度の気温差の週末から一週間が経った。この日の予想最高気温は15度。ちょうど先週の土曜と日曜の中間の気温だ。
虫たちのハッチのエンジンはかかってきているように見える。 ライズはないが、良さそうなポイントを流してみた。予想どおり反応はなかった。 ハッチがあるのにライズがないのは魚がいないと判断していいものだろうか? それとも今のこのハッチでは捕食のスイッチが入らないのか?
ゴゴっと風が吹いた。枯れ葉やらアシの表皮やらが飛んできた。
と、目の前でぼこっとライズした。僕はポカンとしてしまった。 (虫じゃライズしないのに・・) それにたまたまそいつの定位場所がそこで、僕はその手前にいた、という感じだった。風が吹かなければ僕はじゃぶじゃぶとそこを歩いていただろう。 なんとか生き延びた一匹なのかもしれなかった。でも悪いが釣らせてもらう。そいつのライズを見てしまったのだから。 ![]() |