道の駅に入ろうとしたら見覚えのある車が出ようとしていた。
mGの車だった。僕に気付いたmGはすぐに車をバックさせた。
なにかしら行動パターンがいっしょのようだ。
mGが行こうとしている本流ポイントに僕もついていく事にした。

週のなかばに寒気がやってきた。北部では積雪も記録し、季節が半月くらい逆戻りしていた。
その前は爆弾低気圧。川はリセットされているかもしれない。
四月の雪はこれから向かう目的地の景色を変えてしまった(>_<)
mGの川は気持ちよく開けた川だった。背後の木を気にする必要は全くなさそうだ。
ここでかなりのライズに遭遇したということだが、なにせ積雪のすぐあとだ。周辺の雪は消えてなにごともなかったような風景だが、水の中はそういう訳にはいかないはず。
mGが下流側をやるというので僕は上流を攻めることにした。
その時声がした。見ると僕たちの車の所に釣友のYがいた。彼もこの川に来ていたのだ。もっと上流をやるという。
ナガレトビケラの仲間も着実に勢力圏拡大中。
いい感じのポイントが点在する流れだった。のびのびとキャスティングし、思ったところにフライを落としていく。
風はなく暖かい。フィッシングジャケットは脱いでくればよかった。
虫はまだ飛んでいない。mGの話しだとハッチも始まるとすごいらしいのだが。
ライズを釣りたいがそうも言っておられず、おもだったポイントにフライを流しながら移動した。
ほどなくしてmGが追いついてきた。
本流育ちのアマゴ。まだまだこんなもんじゃないはず。
水上と水面下の攻防は続く。
恐ろしく透明で冷たい水が流れる支流を僕たちは遡った。
いくつかの堰堤を越え、僕は堰堤下の溜まりにフライを落とした。
グネッとうねった魚体に僕は大合わせをしてしまい、フライは遥か上方に舞い上がった。
(で、でかい!)
振り向くとYとmGは僕を見て微笑んでいる。
なんだか僕は妙に安心した。ふたりの視線を受けて、僕はしなやかなループを指先に感じながらもう一度キャストした。
本流遡行で膝が痛い僕(写真提供 mG)
ゴギの谷は健在だった。
すでにかなりの量の葦が入渓を拒んでいたが、それはゴギを守る意味では正当な進化とも言えるという気がした。
僕とmGとYとで交互に小さな支流を攻めた。みんなが次々とゴギを手にした。
ただサイズがもうひとつだ。もちろんこれからもっと大きくなるのは想像がついた。水生昆虫をしっかり食べるのは、こんな標高の高い支流ではこれからが本番のはずだから。
ラショウモンカズラが咲いた。山里にも春が来た。
支流の里にも少しづつ季節の移ろいが感じられてきた。
開けた川にはそれなりの面白さと難しさがある。
YとmG、ゴギの王道ポイントを狙う。
僕はなんとか一匹釣り、mGもあとから起こったわずかなライズを取った。僕は上流のYの様子を見に行き、そのあとmGと再合流して、まずは三人で昼食をとることにした。
やはり予想通り、本流のアマゴは降雪を境に状況が変わってしまったようだ。目立ったハッチも見られなかった。アマゴだけでなく水生昆虫も沈黙せざるを得ないほどの気象変化だったのだと思うしかない。
僕たちはここから近い支流でゴギを狙うことにした。ゴギにはまだ時期尚早とも思えたが、ここ数年の葦の爆発的な繁殖は盛期の入渓を完璧に拒んでしまう。入れるうちに入っておかないと釣りが成立しなくなる可能性も十分考えられた。