I から釣りキャンプの話を持ちかけられたのは週のはじめだった。
金曜日の夜のキャンプ〜土曜日の釣り。なかなかハードスケジュールだと思ったが、少しいつもと違うパターンで過ごすのもいいかも知れない。僕は彼の申し出を承諾した。

金曜日の夜9時まえにキャンプ場で落ち合い、そぼ降る雨の中ささっとテントを張って、あとは炊事棟で宴会開始。
何を作る訳でもなく買ってきたものを食べつつ酒を飲んだ。 I とは少し面識があるくらいだったが、向こうは僕のことをよく見知っていてくれていたようだった。

午前0時を過ぎ、尽きない話をいったん終えて眠ることにした。夜半の雨音で何度か目が覚め、最後は鳥のさえずりで起床となった。
気持ちにゆとりがあるから、朝食もゆっくりとる。パンをかじって淹れたての熱いコーヒーを飲んでようやく頭も目も体も覚めてきた。
そして出発。目指す川に先行者、でこの川となった訳だ。
だがどうもこちらで正解だったようだ。
2014 釣乃記
第拾四話 雨のキャンプ、雨後の釣り
ゴギゾーンでひょっこり出たヤマメ。なんだか得した気分。
しとしと雨は不快ではないが、降らないにこしたことはない、かな(^_^;
源流のゴギは自分が魚だと思っていないかも。
キャンプして翌朝釣りに行けば、家から行くより早く現着できるので有利、とはいかなかった。
釣り仲間と一緒のキャンプだと釣りに向かうのに徹底しきれなくなってしまうからだ。
ま、それはそれでいいんだけど。

早起きして家から向かうよりも遅いくらいの時間に目的の釣り場へ向かった。
案の定そこには先行者の車が。
僕と I は仕方なく別の川を目指す事にした。
やっぱり朝のんびりしすぎたなー。
I も釣り始めてすぐにゴギをキャッチ。二人で交互に先行しつつ釣り上がる。
いくらか魚影にムラがあるが、総じて濃い。そして高活性。
途切れる事なく反応があるのは楽しい。

しかし、時折雨足は強まった。
釣り始める直前まで弱かったのだが、川に降りようかというときになってザッと降り始めた。
それから今まで降り続いている。しかしそれがこの高活性の状況を導いているのかもしれなかった。
やや増水気味。場所によってはポイント消滅(x_x)ゞ
徐々に反応がなくなってきた。
二番目に目指した川は横にずっと林道があるから、入渓者も多かろうと半ば諦めていた。
しかし運良く先行者の車は見当たらない。僕たちが入ったあとに前に入られる可能性もあるが、もうここでやるしかなかろうと、 I に言って入渓することにした。

最初の僕の一投、すかさずゴギが出たが空振り! そのゴギが二投目にもすぐ出た。また空振り!
僕はニンマリして I を見た。どうやら活性は高そうだ。
I が戻ってくるのも時間の問題(^_^;
釣友 I 。雨でも軽快なテンポで釣り進む。
雨の釣りは快適さは損なわれる。
それでも反応が良ければ気持ちは前へ前へと出てくるものだ。
フライも沈みやすいし、カッパを通してだんだん濡れてくるし、視界も悪い。
おまけに寝不足でもあるし、濡れたまま車に押し込んだテントの片づけのこととか考えるとユウウツになってくる。
でもそんなことも一匹出てくれるだけで吹き飛んでしまう。
いいな〜、釣り人って、わかりやすくて。
少し雨足が弱まってきたと思ったら、やわらかく日も射してきた。
カッパのフードを取るだけでずいぶんとスッキリする。 I もテンポを上げて釣り上がっていく。
しかしどういう訳か、雨が止むのと同じくらいからゴギの反応がなくなってきた。
雨が降る間だけ釣れる、なんてそんなことあるだろうか?
I はまだ諦めきれないらしく、更に上流へと向かう。
この川はこの先、進めない薮に行く手を阻まれるのだが、僕は黙って I の釣りを見ていた。