F.F.雑感
其ノ六百二十一  満月と朝まづめと猫の魔法
予定通り到着した。予定通り辺りは真っ暗だ。
防波堤の照明のある場所へ行く。誰もいない。これも予定通り。
前回は着いた時から風が強かったが、この日は無風。ここまで順調過ぎたから、落とし穴があるんじゃないかと疑いたくなる。
風がないから気温は1度でも、体感温度はそこまで低く感じない。たっぷり着込んできたから、明るくなったらきっと脱ぐことになるだろう。
海を見ると波もなく静かに月の光を海面が反射していた。
この日も前回、前々回の釣りと同じ場所、同じ朝まづめ狙い。正真正銘の朝まづめをやるので、当然ポイントの港には暗いうちに到着。なのでポイント選定の条件は、照明があり、照明の真ん前が有望なポイントで、足場の防波堤の幅が広いこと、となる。それらを満たす場所は僕は一ヶ所しか知らず、三回連続同じ港にやってきたという訳だ。夜明け前で空いているとはいえ、家からちょうど1時間かかる。土曜日の未明だから夜通しでやっている人はいない。日曜日の未明だといるかもしれない。
防波堤の照明と釣り用のヘッドランプだけでなく、月のあかりも準備の助けになった。確か前の日が今年初の満月、ウルフムーンだったはず。
月に照らされた海はなんだかそれ自体がひとつの生き物のように気配をはらんでいるみたいだった。月の光が無数の細胞(例えばプランクトン)に活性を促す力を注ぎ込んでいるような。
三釣行連続朝まづめ。暗いうちに着くと異世界が広がっている。
ニャンコ先生、朝は冷えましたが日中はポカポカ陽気になりましたね。
朝まづめからみるみる明るくなっていく時、まだ潮位が低くテトラが水面下ぎりぎりに沈んでいる。
その真上にキャスト、引っかからないようにすぐにリトリーブ。
しかしすぐにラインがたぐれなくなった。明らかに引っかかった。強気で攻め過ぎた。
すると動かないはずのラインが逆に引き込まれた。掛かっている!
僕は重いあらがいに耐えながらラインをたぐった。
月光を反射するだけの暗かった海が明るくなって少し見えるようになっていた。生気を帯びた海面にメバルの魚体が浮かび上がってきた。
海面は穏やかだが、どんどん上がってくるのがわかる。
数匹、チビメバルが掛かった後、良い手応えでロッドが曲がった。明るくなってからもまずまずのメバルが掛かった。やっぱり大潮は伊達ではない。
釣り上げると抱卵していた。時期的にはそうなんだよな。抱卵していたり終わっていたり。
メバルのそういう時期という不利な条件に対して、朝まづめに大潮という条件をぶつけてなんとか結果が出た。
時刻は10時を過ぎた。11時が満潮だからそろそろ潮流が止まる。今回も早めの納竿にしようか。
今回も早めの昼飯、今年初の出前一丁。
朝まづめの重量級メバルさん。そして夜が明けた(^0^;)
朝まづめのフライはベイトパターン一択で。 
少し明るくなってからの明るさの変化の幅とスピードは一日のうちで朝夕が一番大きい。魚やそのエサになるものが何かに囚われたかのように動き出す。
東の空がほんのり色づいたと思ったらみるみる明るくなってきた。

そしてすっかり明るくなり、日も登ってきた。まづめが干潮だったが大潮なのでぐいぐい海面が上がってくる。
やっぱり海面が生き物のように迫ってくるような感じだ。
橋を戻り島から本土へ。いつもの展望台で昼飯にした。
過去に2度ほどやってきた猫は来るだろうか? ラーメンを作って食べて片付けて、その間に猫はやってこなかった。
朝早かったからベンチで横になった。目を閉じるとすぐ眠りに落ちた。数分寝ただろうか、目が覚め起き上がっても猫はいなかった。
まあそんなもんか。荷物をまとめて車に戻ろうとした時、猫がやってきた。
「来たの」と僕が言うと、猫はゆっくり座り込んだ。
明るくなってからもメバルさんきてくれました(*^^*)