F.F.雑感
其ノ六百七十一  迫る夕闇とチヌ
あまりにも強い引き。呆気なくティペットが切られたが、ファイトで時間を取られるよりは良かった。徐々に魚影は増え、僕は狙いを定めフライを流し込んだ。
ゴソゴソっというアタリ! 合わすとかなり離れた場所でチヌが掛かった。
思っていた所と実際にフライが通過していた場所が違っていた。ドラグも掛かっていたろうによく食いついてくれた。
その一匹をキャッチし、これからだと息巻いたが、次が続かない。魚影は見えるのに食わない。
この前の土曜日に、粘りに粘って上がる間際に小さいチヌを一匹釣った。とてもじゃないが納得できる釣りではなかった。渓流が禁漁になりすぐチヌに行って、イマイチな釣果。これはやはりゆっくりなどしている気になれない。間をおかず潮がいいうちに行くしかない。
前回の釣りのあとの月曜日が皆既月食、火曜日が大潮あとの中潮、いわゆるあと中だった。何か起こりそうな気はする。だから僕は火曜日に有休を取った。

ゲリラ通り雨は誤算だったし、下げで釣れなかったのも思惑から外れたが、まだ干潮からの満ち上がりのチャンスがある。干潮が夕方なので長くはできないし、下げ同様テイリングの可能性のある川の横の干潟エリアは潮が満ちてくるのは干潮から1時間以上経ってからだ。その頃には暗くなっているだろうから、川の満ち上がり最初のやる気ありのチヌを狙うしかない。
土曜日に続いてまずい状況になりつつある気がするが、やる前から気持ちが負けていては釣れるものも釣れなくなる。

干潮が近づいてきたが、すでに魚影がちらほら見える。もういけそうだ。僕は魚影が固まっているあたりにフライを流し込んだ。するといきなりドンっと重たい引き。(あ、ボラだ)と僕はすぐにそう思った。
満ち上がり最初の一匹。だがこのあとが・・・。
日中の釣れない時間帯。チヌはどこだ〜。
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まさかの赤い色の雲がレーダーで発生していた。数分後に今いる場所に到達する。
車中待機を余儀なくされた僕は、シートを倒し目を閉じた。雨雲はものの20分くらいで通過する。
少しうとうとしかかった時、雨足が強くなりその音で目が覚めた。豪快に降っている。釣りの最中でもなく車の運転中でもなかったのが幸いだ。
ほどなくして雨はやみ、むせかえる湿気の中、僕は釣り支度を始めた。
(下げの時合、逃したかも)
ラスト一匹。良い型のチヌさんでした(*^^*)
河川の横にある干潟エリアはだいぶ潮が引いていた。しかし歩いているといきなり走る魚影。まだ残っている。
晴れているが魚影が見つけられない。また走られた。どこにいた?気をつけて歩いていると、少し先でテイリングしている。僕は気がはやったが、ひと呼吸置いてキャストした。テイリングのチヌは一気に散ってしまった。
このテイリングを最後にチヌの気配は消えた。この日は夕方が干潮だから、下げで釣っておきたかったが、やはり時合を逃したな。
干潮まで、岸の近くでひと休み。
蝶番がっちりフッキング。これならバレません(^o^)
干潟にカニは見えず。貝はたくさん。チヌは何食ってんの? 
フライをベイトに変えるが反応なし。水面のモゾモゾは続いている。辺りは徐々に暗くなってきた。チヌはじわじわと遡上し、僕もじわじわと後ずさりする。
フライをカニに戻した一投目、引っ張ると波を立ててチヌが追ってきた。食いついた!
小さいが釣れた。もうだいぶ暗い。僕はさらに川を上流方向へ移動しキャストを続けた。チヌはモゾモゾしながら上がってくる。
リトリーブするラインが止まった。ロッドをあおる。グウッと重い感触が夕闇の水面から伝わってきた。
さっきみたいにフライが違う所を流れることのないように、川の流れに沿って送り込んだ。
しかし河口ブレイク手前は満ち上がりとは別に海の潮流が強く流れ始めている。これにラインが先に流されてフライが置いて行かれているようだ。
潮流の強さを避けるため僕は上流側に移動した。チヌも徐々に河川側を上がってきていて、うっかりすると僕の背後に居たりする。
上がってくるチヌは水面をモゾモゾ揺らしている。カニじゃなくてベイトを食べているのか?
日没。暗くなるのが早くなってきた。