渇水なのは疑う余地はなく、釣行先に困る。何日か前に降るには降ったが、霧雨がやさしく降りてきた、くらいの効果しかなかったのではないだろうか?
ちょっと前までは釣行ランチのメニューはどうしようとか呑気に考えていたが、現状はかなりセツジツだ。
だがこんな時にでも行くべき川はちゃんとある。渇水でないと行けない川が。当然その川に対しての期待値はこの日の気温同様に上がる一方だった。
春先は迷惑な風も今ならちょっとくらい吹いてもいいよと言って都合よく吹いてはくれない。
川の水量は川の規模で決まりそうなものだ。渇水になれば流れる水が減る。
しかし春先からずっと水の多かった川は渇水の時期にようやく釣りにちょうどいい水量になる。
この日来た川がまさにそうだった。釣り上がるにはちょうどいいというより、まだ少し多いくらいだった。
また空振り、神経質な出方だった。最初の一匹以降、こんな反応ばかりになってきていた。
種が落ちたからには花を咲かす。流れがあるからにはヤマメを釣る。
一投目でいきなり釣れたヤマメは河畔林の影になっている流れ、読み通りの場所に居た。
どうかなと思っていたが幸先が良い。でも時間の経過とともに気温も水温も警戒心も上がってくるだろうから、今こそがゴールデンタイムかもしれない。
少し釣り上がるとまた出た。今度は掛からない。神経質な出方だった。多少スレているのはやむを得ない。渇水でカラッカラの川で釣りをするよりはこっちの方がよっぽどいい。
一投目、飛び過ぎた。
フライは狙った着水場所の更に先の落ち込みの水流にもまれ沈んでしまった。
やむなくピックアップするとロッドが一気に引き込まれた。
やはり春先から増水続きだったこの川は釣り人の入渓を拒んでいたことは間違いなかった。
釣り人基準の水位なんてヤマメには無関係なことだ。
渇水と言ったら渇水。スレると言ったらスレるのだ。
じとっと汗ばんできた。これは今年初だ。快晴、無風、そして増水の渓を釣り歩く。そりゃあ汗もかくはずだ。
いや、違った。渇水だった。この川にとっては釣り人視点では増水のように見えるが実は渇水のはずだ。その証拠にヤマメの反応は結構厳しいものだった。この日以前はきっと水位はもっと高く、川通しにはとても歩ける状況ではなかったことが想像できる。
それならそんなには釣り人は入っていないはずだ。なのにこんなにスレているのは水位が下がったことが影響しているのだと思える。釣り人にとっては見た目十分な水量であってもヤマメにはそうではないのだと、これまた釣り人目線の勝手な推測だが。
そして追い討ちをかけるように日光は容赦なく降り注ぎ、気温も上がってきた。こんな時の釣り方は、もうアレしかない。
たつなみそうにしらいとそう。そろそろ初夏の花々が顔を見せ始めていた。
さあって、いったい何度あるのかしら、水の上も水中も。
ネットに収まったヤマメは明らかに年越しの、そして不機嫌そうな面持ちで僕を睨んだ。
スレたヤマメは総じて機嫌が悪い。釣り人のせいでもあり気象のせいでもある。
前者は自分のことを棚に上げるようだが僕自身も影響をこうむっているし、後者は僕に言われても。
この日このエリアで観測された最高気温は29度だった。
いやいや、軽く30度は行ってたはずよ。体感気温とのギャップに僕も少なからず不機嫌になった。
ティペットを継ぎ足し、投影面積の小さなエルクヘアカディスを結んだ。
なにを思ったか、今年はシーズン中でありながら、時間を見つけてキャス練をしてる。フライを始めた当初以来、十数年ぶりに、だ。
キャスティング自体はまだまだひどいものだが、それでも以前よりは有効射程距離は間違いなく伸びた。スレたヤマメには離れた場所からロングキャストで狙うしかない。この日のロッドもそんな戦術に耐え得るものだ。
ロングキャストの末の沈んだドライの一匹(-_^;)
水温にも蕎麦の冷え具合にも敏感にならざるをえませんσ(^_^;)
陽は傾き、さわさわとやわらかな風が吹いた。