2018 釣乃記
第十一話  夏日の町を離れて
う〜む、これはちょっと無理かと思わせる水量だった。渡渉できる場所ができなくなっている。週の半ばの雨がここまで増水させていたとは意外だった。
土曜日だけが晴れの予報だったので、慌てて前夜にピーコックのパラシュートを七本巻いてきた。もうこれからの季節は、雨で増水した時が狙い目になるが増水から引き始めのちょうどいい水位をやりたい。
なかなかそんなタイミングにぴったり合わすのはむつかしいがこの日はちょっと早かったか。
梅雨の増水、されど夏の風景。
しっかり体高のあるのがなんだかうれしい。
この日の最初にこの日一番のヤマメ。
時間が経ち、川に着いた時よりはだいぶ気温が上がってきていた。この日、町は30度になる予報だ。前の日にも降っているので、町はかなり蒸し暑くなるだろう。
少し移動して、ふと気になった所で川の様子を見た。高低差のないフラットな流れで増水していてもなんとか釣りになりそうな所だった。
僕の記憶ではここでは釣りをしたことがない。僕はそこへ降りてみた。
フラットでも増水の影響は思ったよりも大きかった。川岸をアシを掴みながらで、なんとか遡行できる。速い流れの中の少し緩い溜まりにフライをキャスト。また小さくポショっとしぶき。合わすとぐいぐい引く。寄せるとさっきのほどではないが、体高のあるいいヤマメだ。これはいい場所を見つけたかも知れない。
さらに進んでここだと思うポイントにキャスト。ほとんどが出たかどうかわからないくらいの反応。しかしいい引きが返ってくる。わかりにくい反応だけに合わせ損なったりバラしたりもある。それも数えるとかなりの魚影の濃さだ。
川の横の道路を宅配便の車が通った。確かちょっと前に通った車で、それ以外は通っていない。釣り師らしき車も見ていない。
もちろん川筋でも釣り師は見かけないし、みんなこの川の増水を予測してほかへ釣りに行っているのだろうか?
狙いのポイントはそこ以外は増水でポイントが消えている状況。水位は高いが川幅が広がっていて流れ自体は緩い。
ピーコックパラシュートをキャスト。流れの真ん中でポショっと小さくしぶきがあがってフライが消えた。
合わすと重い。狙い通りの場所できた。流れに逆らい魚を寄せてネットですくう。想像通りの一連の動きで釣る事ができた。
そのあとは増水で先に進めず、僕は斜面をよじ登って道に出た。
数分くらいは寝ただろうか、シャツは乾いている。
体がずいぶん軽くなった。コケるまでにけっこう釣ったが、もう少しやってみる気になった。
別の初めての区間に降りてみたが、ここがまた当たりだった。深みからゆっくり出てくるヤマメや速い動作でひったくるやつ。フライをなかなか乾かせないからすぐに沈むが、それに食いつくアマゴ。
また涼風が吹き、僕は30度の町にはなかなか帰る気にはならなかった。
あっと思った時には水面に手を着いていた。またコケた。前々回もびしょ濡れになったが、今回はそれを上回る濡れようだ。
濡れて気持ち悪いのをのぞくとフライカチーフが濡れたのが痛手だ。なかなかフライの水分を取り除けない。

昼ご飯を食べて少し寝た。せっかく川に来ているのだから、気持ちいい事をしない手はない。
涼やかな風が木々を揺らす音と川の流れる音だけが聞こえる。
増水の恩恵があるうちに、もうちょっとだけ釣らせてもらいます(^^;)
ますます活性化の増水ヤマメ、じゃないな、アマゴ様。
もぐもぐタイムは食べ過ぎかなと最近思う(^^;)
水辺のすやすやタイムは至上の快適さ。