2018 釣乃記
第七話  五月の緑と光の只中
七ヶ所のうちの三ヶ所目、特別ハッチもライズもない。
ここぞというレーンを流してもハヤすら出てこない。まだ完全には引ききっていない増水の影響なのか?
残り四ヶ所に期待を賭けるしかなさそうだと思った。GWの最初の釣りは調子がよかったが、そのあとの釣行は今ひとつだった。
それから一週間後のこの日、そろそろ日中の釣りは厳しくなるが、増水明けの水位次第では良いかも知れないと思って来た。
気持ちいい光の波長の中をゆく。
前回の釣りの時に偏光グラスをなくしてしまった。
グラスコードをつけておらず、帽子にかけて薮をこいでいて、気付いたらなかった。
フィット感のいい気に入った偏光だっただけに悔やまれる。どうしようかと思っていたが、釣り具屋でこれまたイイ感じのフィット感の偏光グラスを見つけた。レンズの色もいい。
思いきって買った。どのみち要るものだし、偏光なしでは川歩きも危ないと思ったからだ。
ややこしい流れの中の一匹。
たまたま釣り具屋にあったインテグラルブラウンデミ。偏光は大事だ。
六、七ヶ所目は下流側だった。増水の影響はかなりあり、どちらでも魚は出てくることはなかった。

午前中の三ヶ所目のポイントを攻めていた時、諦めかけていたが、この場所は毎年ライズを取っていたポイントだった。
今年も一匹は釣っていたが、満足できる魚ではなかった。
もう少し粘ってみる気になってキャストを繰り返した。
日差しが流れを複雑に反射させていた。
川から上がり、光と緑の道をゆく。
ひと眠りしてスッキリした。残りのポイントを目指して移動した。午後になり陽の光が木々を強く照らしている。
GWの時はまだ新緑の淡い緑で覆われていたが、もうかなり深い緑に変わりつつある。
驚くような早さの木々の成長だ。家にハナミズキや蔦を植えているので、緑の変化に今までよりも敏感になっている。

五ヶ所目でグッと重たい引き、しかしすぐにバレてしまった。
ラ王の汁なし担々麺。広島のとはやっぱり違うな(^^;)
本気寝のすやすやタイム。
四ヶ所目、前々回にまずまずのヤマメを釣った場所だった。しかしなにも起こらなかった。一ヶ所目・二ヶ所目と同様だ。やはり同じポイントで何度もというのはムシがいいのか?
と、うねった流れでフライをかすめるピンクに染まった魚体が見えた。空振り。しかし良い型だった。居るには居るな。
この日の釣りは去年か今年に良い型を見たが釣り損なったポイントを重点的にやってみる作戦を立ててきた。目当てのポイントは全部で七ヶ所。それ以外にもざっとやってはみるが、七ヶ所のポイントが最優先。
四ヶ所目のあと、昼食にした。食べて横になったら数秒で眠ってしまった。眠りの中でうっすら風を感じた。気持ちよかった。
複雑な流れの波間にアマゴが突然現れた。
遅いか?っと思ったが合わすと掛かった。水しぶきは一切ない。アマゴだけが見えた。
深みにぐいぐい潜ろうと引くのを耐えながら、(これはこの偏光グラスだから見えたのか?)と気が付いた。

アマゴをネットに横たえると、きれいにパーマークが浮かび上がった。
五月の光は緑だけでなくアマゴも生き生きと照らしているようだった。
ざわざわと風が五月の緑を揺らす。