2018 釣乃記
第弐話  迷いニンフの行く先
だいたいのパターンだとまだ気温の低い午前中は風がない。
気温が上がってきて午後になると、キャスティングもままならないほどの強風が吹き始める。
水の中がどうなのか、しかし風のないうちにやっておくという考え方もある。たとえヤマメの活性が低かろうとも。

僕はハッチもライズもない、静まり返った流れにフライを投じた。午前中の陽の位置は水面をぎらぎら反射させてフライが見えづらい。
結局脱渓場所まで一度のアタリもなかった。
残り時間、どうするか頭を巡らせ、僕はこの日唯一反応のあった最初の場所に向かった。
陽が山の稜線に隠れる少し前、その流れに立つと小さな虫のハッチ、そしてライズが起こった。ライズは見るからにハヤのものだったが、可能性はある。
ドライにはやはり反応せず、僕はまたまたニンフを投じた。
マーカーがフッと沈んだ。合わすと手応え、しかしバレた。
ニンフ、イケるな。僕は自信と落胆をいっしょに感じていた。
あともう少し。水がぬるんでくれば、きっと。
一応今季初ヤマメ、あ、アマゴ。ニンフでかっちりと。
どうにも投げたドライフライに分がないような気がしてきた。僕はニンフに結び変えた。ノーマルビーズのミドルウェイト。ラクーンドッグ(タヌキ)のヘアを使ったやつだ。
投げてすぐ、マーカーを見失った。逆光で見えない?いや? 僕はロッドをあおった。掛かっている。

なんとか今年の初物を手にしたが、ちょっと呆気ない。ニンフの効果はしっかりと確認できたのはよかった。
たぬたぬニンフ。安定感の手応えはある。
地上の天気は上々。ようやく春の訪れを感じるのだが。
快晴無風、虫もだいぶ飛び始めた。しかしライズする様子はない。虫のハッチとヤマメの活性が必ず連動するとは限らない。まずその前にここにヤマメが居るかどうか? しかし、居るであろうと思われる動きがあった。上流からひとり、下流からひとりそれぞれ釣り師が僕のいる場所に近づいて来つつあるのが見えたからだ。
まだ距離はあるが微妙だ。どちらかと言うと上下の二人が先に釣りをしていてそこに僕が割り込んだ形のようだ。もちろん入渓する時には見えてなかったのだが。
せっかく降りて来たのだから目の前の流れにニンフをキャストしてみた。しかし広々とした本流では今度はニンフが分がないように思えた。しばらくすると上下の釣り師は見えなくなった。川から上がったようだ。なんだか悪い気がして僕も上がった。
初物を釣ったあと、上流にエサ釣り師の姿が見えたので、僕は川から上がった。
釣っている間、誰か知り合いがやって来るのではないかと思っていたが、そのエサ釣り師以外に土手を通る車もいなかった。
水は思ったほど冷たくなかった。これならこのあと移動してからも期待が持てそうだ。
最初の場所から車で10分、次の場所に降りた。最初の場所も本流だったので、そこから下流へ向けて移動しているので、その度に場所は大場所になる。
最近は腹減ってもぐもぐタイムを取るのではなく、疲れてエネルギー補給のために(^^;)
その後一ヶ所ポイントを巡り、アタリのないままもぐもぐタイムへ。気温は徐々に上がってきていて朝寒くて着込んでいたが一枚脱いだ。
支流は解禁一回目の時より水位は下がっていた。思えば本流の減水の方が顕著だった。支流は入ってみると明らかに本流よりも冷たい。雪代が地面から染み出しているのかも。
ドライを投げてみるも、やはり分がないような気がする。
結局ニンフに変えた。しっかり沈めて反応を待つ。