其ノ四百三十三  きびしめの春の始まり
防波堤から外洋側をのぞきこむと、全く生命の気配がなかった。木っ端の姿も完全に見えない。
前回の釣行は強風で散々だったが、風がなくてもダメだったかも知れない。
例によって忘備録のこのHPを見返すと、一年前の二月は釣行の度に釣果一匹という際どい状況が続いていた。さらに前には二月最後はボウスで終わり、不完全燃焼のまま川の解禁を迎えた年もあった。
姿を消したメバル様。いったいどこへ?
メバルは産卵後に姿を消す時期があるらしく、ちょうど今がそうなのか? メバル以外の魚も一切姿を見せないというのは、そもそもこの季節が海全般が釣りがむつかしいということでもあるのか?

七つの橋の島の四番目でよく見かける、脚立持参の二人組の手前でようやく一匹釣る事ができた。
結局この日はそれだけで島をあとにする事になった。
ラダーズ登場。定位置での釣りは自信の現れか。
またまた忘備録で確認すると、四年前の今時期はソチオリンピックで夜中に競技を見ていてかなり寝不足云々ということを書いている。もちろん平昌オリンピックもソチと違って時差がない分、かなりの競技を見ている。
今回は女子カーリングを予選リーグから夜に試合があるものは全部見ているので、カーリングのルールや攻め方がわかってきて、わかってくると見ていて面白い。その女子カーリングが準決勝に進み、準決勝は韓国に敗れたが三位決定戦でイギリスと対戦する。それが土曜日の20:00からだった。
同じく土曜日、川の解禁前最後の週末には一応は海の決着をつけたいと毎年のように思う。今年の雪の多さに苦戦が予想される川の解禁の前に気持ちを落ち着かせておきたいのだ。しかしそれには潮が悪い。昼間に干潮、満潮は夕方。先週の海の状況を考えると夕まづめくらいしか期待できそうもなかった。
釣り具屋で今年の遊漁券を買った時、知った人と話しをする中で、海はよくなっていると聞いた。二月の釣れない状況はもう解消しているのか?
そして週末土曜日、僕は解禁前の決着をつけに七つの橋の島へ向かった。
あれだけ寒い日々が続いていたのに、この日は春の霞みがかかっていて、一気に寒さは緩んでいた。
しかし海の様子は前回とほとんど変わっていなかった。
島到着、お昼が干潮ならご飯食べます。
霞む海と島。春が来ている。 この一年でソルト釣行の回数はかなり増えてきた。
「釣れるかね〜」と声をかけられた。七つの橋の島の三番目の港。「釣れません〜」と言うと、「今は釣りに来る人が少ないね〜」と言われた。確かに釣り師が少なかった。釣れないとわかっているから来ないのか?
島に着き、館長の間に釣行ランチ。そしてこの港の前に二ヶ所、いつもの四番目の中央港やその隣の港をやってみた。しかし一切反応はなく木っ端の魚影すら見えなかった。
「ようやく少し暖かくなりましたね」と言うと、「そうじゃねー。ちょっぴりぬくうなったね」と言ってその人は帰っていった。入れ替わりに数名の若い釣り師が僕の向かいの浮き桟橋で釣りを始めた。
日没まであと2時間。割りとある。僕はここで夕まづめに賭けるつもりでいた。ただ・・・。
日没18:00、女子カーリング三位決定戦20:00。日没後すぐに釣れて、そのあと帰り始めたとしてぎりぎりだ。
そんなにうまくいくものか。ただでさえ解禁前のソルト決着が微妙な状況なのに。
でも今年の初釣りの時に、安定釣果と引き換えにドラマティックな釣りは経験できなくなったと思ったが、またその状況に直面した。でもカーリングを観るのを優先するなら、ボウズで帰ることも覚悟しておかなければならない。
スリリングな釣り、復活か!?
18:00を過ぎた。下げ潮が始まり、しかし海面は沈黙したまま。僕やあとから来た若い釣り師達にアタリはない。
今日という今日はダメだ。僕はこの一投で帰ろうと思ってキャスト、リトリーブした。
ゴ、ゴンっと手応え! 僕はなんの事かわからず、でも無意識にラインを手繰った。
本当に最後の最後できた。
そして僕は家に帰ってこの日の釣りよりも更にドラマティックなカーリング三位決定戦を観た。
夕まづめのメバル様。救われました(^人^;)